てくてくと【4月28日~4月30日公演中止】
やしゃご
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/04/17 (土) ~ 2021/04/30 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
◼️約110分◼️
ダイバーシティが大事、との掛け声がかまびすしい昨今にあって、多様性を維持しながら社会を切り回すのがいかに大変かをリアリズムに大きく寄った脚本・演出で生々しく描いた一作。観る者の心を低音ヤケドさせるような、特定の人物に過度に肩入れしない定点観測的ともいうべき冷徹な描きっぷりが素晴らしい。重いテーマの作品なのに随所に笑い(主に、苦笑系の)が生まれるのは、この徹底したクールさゆえか?
波高けれども晴天なり
無名劇団
大阪市中央公会堂(大阪府)
2021/04/17 (土) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
満足度★★★★
とても良かったです。皆演技上手けど、今回のMVPは島原さん。他の人のセリフの時も視線や動きが絶妙。極めてる感がありました。内容も今のトレンドを被らせながら、人生を考えさせられる内容。満喫できました‼️
カメレオンズ・リップ【5月2日~4日大阪公演中止】
KERA CROSS
シアタークリエ(東京都)
2021/04/14 (水) ~ 2021/04/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
幕が開くと、アメリカの田舎の山中の一軒家、謎の死を遂げた妹そっくりの使用人(生駒里奈)と暮らす主人公ルーファス(松下洸平)が、亡き妹は嘘が大好き、真実の中に嘘を交えてこそ、嘘の名人なのだと話しはじめる、生のピアノとレコードを使った嘘とホントのギャグ、観客はたちまち、ケラの世界に引き込まれる。
ジャニーズ客がいなくても、かつてのようにさまざまな世代で埋まり満席(コロナ席なし)になった客席が、筋もよく掴めないナンセンス劇に笑っている。何だか懐かしい舞台を観ているような感じ。思い起こせば、コロナ騒ぎのこの一年、舞台の上も、観客も一体になって芝居に心を開く安らぎのある舞台には出会わなかったような気がする。
ケラリーノ・サンドロヴィッチの初期の作品をいま現役の若い演出者が再演するKera Crossシリーズの第三弾。今回の演出者は河原雅彦である。
今回の上演はケラの舞台の経験のほとんどない俳優たちが演じながら、まるで、ナイロン100℃の公演のドッペルゲンガーのようにケラの乾いたナンセンスの世界が作れたという発見が最大の見どころだろう。初参加で快演した岡本健一がパンフレットで言っているように「登場人物がそれぞれの事情を抱え自分を偽りながら現実に対して必死にあがく哀歓漂うドラマ」(まとめ方、うまい!!)を、この家に集まってくる様々な人々、亡き姉の夫(岡本健一)、元使用人(ファーストサマーウイカ)、近所に住む眼科医師(森準人)、姉の友人(野口かおる)、なくしたハンドバッグを取りに来る女社長(シルビアグラフ)近所の退役軍人(坪倉由幸)、がそれぞれに嘘をつき、騙し合い、演じていき、不条理な世界が笑いに包まれていく。
嘘が事態を混乱させ、破綻してゆくクライムストーリーの筋を追うことはほとんど意味がない。しかし観終わってみれば、ドッペルゲンガーみたいだったこのドラマはやはり、バブル後のケラ本人の作った二十年前のナイロンの世界とは違う。いまの演出家、河原雅彦は不条理なドラマを、俳優にはナイロンの演技を踏襲させているように見えて、どこかすっきり整理している。貼り絵のようなタッチの美術(石原敬)も、井澤一葉の音楽も舞台にマッチしている。
ケラリーノ・サンドロヴィッチと言う日本演劇界に突然現れた特殊な才能がこれからも長く生き続けられる証明にもなった上演だが、何よりも、この一年とげとげしく冷たかった劇場の空気が、ここでは温かく弾んでいたことを高く評価したい。
6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3
オフィス上の空
吉祥寺シアター(東京都)
2021/04/09 (金) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
こわっぱちゃん家「picnicへのご案内」は近未来のお話なのですが、死という普遍的な世界を描いて、本当に考えさせられました。
良かったです。
Pitymanは不条理な世界観に、奇妙な間が面白くて気にいりました。
ちょっとテンポが悪く感じてしまうのは私だけかな。。。
オリンピアの夢
いいむろなおきマイムカンパニー
ピッコロシアター (兵庫県)
2021/04/16 (金) ~ 2021/04/17 (土)公演終了
満足度★★★★
体の表現だけであこまでやるのは凄いなー😣。でもセリフがある方が、
個人的に好きです。声に惚れることもあるので。トリプルコールは流石と思ったが、シャドービューも感動。新しいジャンルを体験できたことに感謝です。
タバコの害について/話してくれ雨のように
劇団夢現舎
ふらんす座(広島県)
2022/03/04 (金) ~ 2022/03/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
見せ方もユニークで演者も芸達者。コロナ禍も交えた面白い芝居でした。スタッフさんも親切で、丁寧な劇団さん。おすすめです。
斬られの仙太【4月25日公演中止】
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/04/06 (火) ~ 2021/04/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
俳優たちはいずれも好演で見応えがあった。はじまりの第1幕、方言というか農民言葉の意味が少々聞き取りにくく、人間関係や物語の端緒が把握しにくかった。天狗党の乱や幕末期の水戸藩の内部抗争などを知っているとストーリーが歴史的にも面白くなるが、知らなくても芝居として十分楽しめる。要所でショスタコーヴィチの5番が用いられているのは、革命なるものの真実を暗示してのことなのだろうか。
ゴヤ-GOYA-【4月25日~29日公演中止】
松竹
日生劇場(東京都)
2021/04/08 (木) ~ 2021/04/29 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
スペインの画家・ゴヤの生涯を素材にした国産・新作ミュージカルである。
言葉では説明されていない絵画を言葉で、と、画家は演劇のみならず、小説や、映画の素材によく取り上げられる。共通点は、このミュージカルがテーマ曲にしているように、絵画は「一瞬の時を残す」、演劇は、上演したその時しか生きられない。ともに現在では複製化はできるが、根元は一瞬のものという事か。
日本演劇では、フランスの画家ゴッホを主人公にした「炎の人」が近代古典化している。
画家の生涯と作品から、芸術家の創造の原点を解き明かし、演劇と言うローカルな場で再生させたということになる。「炎の人」のラストには日本人への呼びかけの言葉が延々とある。
ゴッホは日本では人気の高い作家だが、ゴヤは名前こそ知られていても、評伝も堀田善衛の大作「ゴヤ」が売れたくらいで、長く生きた波乱万丈の生涯も、スペインと言う国の特殊性もあって、あまり知られていない。
そこを危惧したためか、この作品はゴヤの生涯をかなり丁寧に追う。上昇志向の強い才気のあるサラゴサの地方青年が、マドリードの宮廷政治に巻き込まれ、聴力を失い,フランスへ逃れ、その間に画風も次々と変わっていく。スペインの自主性のない日和見王制がフランス革命に揺れるくだりなどは知らないこともあって、面白い。ミュージカルだからスペイン風俗のフラメンコや、宮廷のシーン、ゴヤの絵画が活人画になる(王の家族、裸のマハと着衣のマハなど)サービスもあって、一幕90分、休憩20分を挟んんで二幕80分、堂々たる国産ミュージカルである。
コロナ禍の不自由な環境の中で大作をまとめたのはさすが、松竹と思わないでもないが、やはり、折角の大作だから幾つかの注文は出てくる。
G2の脚本は生涯を分かりやすく描いていてなじみのない国の政情はよくわかるがそこに巻き込まれたゴヤと言う芸術家の転向点の心情に迫るところが弱い。「一瞬の時を残す」という一点に絞っても、もっと深く作ることもできただろう。ことに二幕の、プロローグにもあるラストの「異様な風刺」につながるところが弱い。一幕はもっと整理してもいいと思う。ミュージカルらしいシーンにしても、時代や場所のエキゾチックに見える説明シーンが多く、ゴヤの内面を歌や踊りに昇華させたシーンがない。音楽も無難に走って曲は意外に平凡、歌詞としては生硬な言葉を選んでいて乗りにくい。
主演の今井翼はスペインの親善大使でもあるそうで、フラメンコを踊って見せるくだりなどサービスもあり、ジャニーズ時代からのファン向けには久々の復帰公演でよかったかもしれないが、この大作を背負う芸術家のゴヤの生涯には遠い。初歩的なことを言えば、年齢の経過がほとんど表現されていない。そんなものは必要ないと考えるのはジャニーズ時代を引きずっているからで、これから松竹に移籍して舞台で主演を張っていくためには舞台の細やかな配慮が必要である。今回は助演に妻役の清水くるみ、ポルトガル国王になるゴドイ(塩田康平)の期待できそうな新星が目立った。脇も、山路和弘や天宮良のベテランが固め、仙名彩世(モデルの伯爵夫人)キムラ緑子(スペイン王妃)がしっかり笑いをとっている。
折角これだけ仕込んだのだから再演することもあるだろうが、大幅に手を加えてもっと切実な締まったドラマとして見せてほしいものだ。
6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3
オフィス上の空
吉祥寺シアター(東京都)
2021/04/09 (金) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【青】を観劇。 Pitymanの受付検温の話はクスッとさせれてました。後半のこわっぱちゃん家、やられました。
我慢したけど涙が・・・悲しいけど穏やかで素敵な別れでした。
パークビューライフ【4月25日大阪公演中止】
エイベックス・エンタテインメント
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/04/07 (水) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/04/16 (金) 18:00
素敵な舞台だった。観終わって帰るときハッピーになれる、そんな作品だった。観るべし!
瀬戸内海の島から東京に出て来た幼馴染みの3人娘たまえ(倉科カナ)・かなえ(中川翔子)・のぞみ(前田亜希)は、それぞれ何かとうまくいかず、3人で島に帰ろうという最後の夜に、屋上庭園に忍びこもうとする。しかし、屋上に登ってみると、そこはペントハウス。留守と思って家の中に入り、希望通り屋上に上がって取りとめもない話をしていると、家の住人よう(風間俊介)と出会うが、よう、は人とうまくやっていくことができず親の遺産で一人暮らしをして絵を描いているだけの日々だと言う。3人の話を聞いてて「一緒に住もう」とようが言い出し、…という物語。
4人芝居で岡田惠和の脚本が光る。ちょっとありえないけど、あったらいいな、的なファンタジーとして丁寧に作られている。また、4人の演技も素晴らしい。冒頭の3人娘の会話で3人のキャラクターがしっかり示されるだけでなく、20分ほどセリフなしで登場する中で本人のキャラクターを提示する風間が特に巧いと思った。ONEOR8の田村孝裕の演出も、岡田の脚本を活かし、細かい部分もしっかり作られている。どなたかの感想に「プロの仕事」というのがあったが、確かに、と思う。この素晴らしい芝居が、平日夜とは言え、半分ほどしか入っていないのは勿体ないとしか言いようがない。
6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3
オフィス上の空
吉祥寺シアター(東京都)
2021/04/09 (金) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
赤
前の席の人が開演1分前に来て、席にだらしなく座り、
頻繁に頭を左右に大きく動かし、身体が下にずり落ちると上にあがる上下運動、
劇中にチラシを見る人であまり集中して見られなかったのが残念。
偉い人か作家さんなのかな。
いびきに比べたらマシだったけど笑
男性がセクハラ?パワハラ?にあっているのに何故か
ついつい笑ってしまう、勿論、ハラスメントはハラスメントとして茶化さずに対話しているのが良かった。
6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3
オフィス上の空
吉祥寺シアター(東京都)
2021/04/09 (金) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
黄 PandemicDesignに魅了された
観劇し終わった後にすぐに検索かけて
次回公演をチェックした、それくらい
おもしろい舞台だった。
そりゃチケットも完売するよな〜。
6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3
オフィス上の空
吉祥寺シアター(東京都)
2021/04/09 (金) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
青
こわっぱちゃん家を目当てに観劇。
なかなか面白い設定で、人間関係もわかりやすく
それでも何かを考えさせられ、いつの間にか
じーんと来るものがあった。
映画とはまた違った生での心に訴えかけるもので
今日、観劇できたことに感謝しています。
ナイト・クラブ
黄色団
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2021/04/16 (金) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
黄色団得意のオムニバス。ステプラの月1公演より数段進歩しています。各々にきっちりとテーマがあり随所に近藤さんらしさが出てました❗雲☁️の上の人になった感じです。次回も楽しみにしてます‼️終わって時計を確認しビックリ👀‼️それだけ良かったということですね✨
パークビューライフ【4月25日大阪公演中止】
エイベックス・エンタテインメント
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/04/07 (水) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
2回目。終わってみれば「風間俊介万歳!」な気分にみんながなるようなハッピーな舞台。
細かい演出や台詞が良く出来ている。流石、プロの仕事と云う感じ。
相談スクラムや『あるよね』ネタなど、小さな仕掛けが伏線となってじわじわ効いてくる。
パークビューライフ【4月25日大阪公演中止】
エイベックス・エンタテインメント
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/04/07 (水) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
岡田さんの戯曲ということで観劇。
ところどころ、何故か涙腺にグッとくる箇所があった。泣かせる芝居ってわけじゃないのだが、言葉が胸にくる場面が…。
ただ、2景しかないお話で、物語のはじめと終わりだけを観たような感覚。楽しく気軽に観られていいんだけど、ちょっと物足りない感もある。
軽快なテンポなのはよかったな。
パンドラの鐘【4月25日~5月4日の東京公演中止】
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2021/04/14 (水) ~ 2021/05/04 (火)公演終了
実演鑑賞
上演時間は、約1時間50分(途中休憩無)。
あまり奇をてらわず、真正面から戯曲に向き合う
姿勢に徹した演出が印象的な舞台作品。
各々の役者が、戦争直前の日本と古代とをまたいで
ほぼ対応する役を交互に演じ分けながら話を進行させる
趣向は、二つの時代の単なる直線的な往来とは違い、
時間的渦のようなものを生み出し、観る者をスパイラルに
その中へ引き込み呑みこんでゆく作用あり。観ていて
おもしろいが、演じる側は負荷がかかり相当大変。
初演時野田版でヒイバア役の野田さんも語り手として、
声のみだが出演。
カメレオンズ・リップ【5月2日~4日大阪公演中止】
KERA CROSS
シアタークリエ(東京都)
2021/04/14 (水) ~ 2021/04/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ケラが「黒い三谷幸喜」と言われる理由が、初めてよくわかった。このケラクロスのシリーズでも、殺人が平然とこんなにたくさん起きる芝居はない。「グッドバイ」は元プレイボーイと女たちが和解するハッピーエンドだし、「フローズン・ビーチ」だって、昔の恨みで人を窓から突き落としたりしても、実際には死なないでまたでてくる。今回は、そこに行くと、乾いた悪意、ドライな犯行が後半、次々起きて、驚いた。亡霊が部屋の明かりや家具を動かすオカルト・シーンも楽しかった。
それぞれの登場人物の関係の謎や、いくつも作った伏線を最後はきちんと回収しているのはさすがである。
俳優たちがよくて、見ていて飽きない。黄色い声でオーバーに語る野口かおる(シャンプー)は犬山イヌコみたいにコミカルだし、芝居上手の渋い岡本健一(弁護士のナイフ)はもちろん、その愛人(?)のファーストサマーウイカ(ガラ)は、村岡希美のようおかしみがあった。姉とエレンデイラ役の生駒里奈は可憐で緒川たまきのよう。ケラのナイロンの役者にあて書きした雰囲気で演じているのかと思ったら、全く違った。この戯曲はそもそも外部向けに書かれたもので、17年前の初演メンバーも犬山がガラをやった(らしい)だけで、ほかは全然別の役者。失礼しました。
6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3
オフィス上の空
吉祥寺シアター(東京都)
2021/04/09 (金) ~ 2021/04/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【青】チーム観劇。Pitymanは3話オムニバス。シリアスめなロングコントのようで面白い。3話目はちょっと切ないけど。こわっぱちゃん家は近未来SFヒューマンドラマ。こういう晩年もいいかなーと、50半ば過ぎのオヤジは思う。リアルとバーチャルの選択は難しいけど。
斬られの仙太【4月25日公演中止】
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/04/06 (火) ~ 2021/04/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
戦前の左翼運動を幕末維新の水戸・天狗党に仮託して描いた作品である。農民(大衆)と武士(知識人)の関係をニヒルなまでに冷徹に捉えている。尊皇攘夷の大義のために天狗党と行動を共にした農民の仙太(伊達暁)が、藩の内部抗争にあけくれる運動の実態に嫌気をさして一度は田舎に引っ込む。それでも、天狗党の加多(小泉将臣)に説得され、再び運動に身を投じたのに、最後は切り捨てられる。
加多はかつて仙太の疑問には理があると感じるような広い視野をもつ男である。それでも、最後は泣いて武士の側に立つ。維新後の自由党も、結局、天狗党と変わらないというニヒルな見方もされている。「農民のことを本当に考えているかどうかを見極めなきゃダメだ」というせりふがあるが、そういう革命党なら信頼できるとも取れるし、そうでないから革命党は信頼できないともとれる。左翼演劇の当事者だった三好十郎の転向表明とも、運動批判とも、信条告白とも取れる。前向きに取るなら、農民大衆の側にたったカッコとした運動を作ろうという呼び掛けでもあろうか。
大きな維新の動きを狭い筑波山近辺の出来事で描くので、「オフェーリアの死」の知らせのような、伝聞情報が多い。と思っていたら、ここぞというところでは真剣で斬り合う剣劇シーンが見られて、盛り上がる。女性の少ない芝居だが、芸者役の陽月華に切ない花があった。まじめに働き続ける段六役の樋口寛之も、みんな頭に血が上っている人々の中で、ホッと落ち着ける存在感があった。
もと戯曲は7時間あるのを4時間20分(20分の休憩2度含む)にカットしたというが、話に無理はないし、ほとんど長さも感じなかった。見終わって、清々しさが残った。スピーディーでメリハリのついた見事な演出だった。舞台は、奥がかなり高い傾斜舞台で、セットはほとんどない。そこにふすまを置いたり、木戸を置いたりして、場所の違いを示す程度。目で見るというより、語って聞かせる濃密なセリフ劇である。ただ衣装や刀は幕末の農民、武士をしっかり示していた。