超ではない能力
24/7lavo
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/05/13 (木) ~ 2021/05/17 (月)公演終了
姿
ゆうめい
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2021/05/18 (火) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
「母 MATKA」【5/17公演中止】
オフィスコットーネ
吉祥寺シアター(東京都)
2021/05/13 (木) ~ 2021/05/20 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ほぼ85年前に書かれた不思議な後味を残す作品だ。
SFの創始者として知られるチェコのカレル・チャペックの晩年の作。ナチの影がチェコに迫っている。
五人の男の子がいる軍人一家、父(大谷亮介)は植民地の原住民との戦いで17年前に戦死、今はこの家の居間の額に収まっている。長男は医者で公熱病の研究中に死亡、次兄は右翼の軍人、三男はテストパイロット、四男は自由主義者、最も若い五男は病弱である。一家だんらんのシーンから始まるが、どうやら、登場する彼らはみな死者らしいことが次第にわかってくる、この辺は百年前の本とは思えぬほど技巧的なのだが、男たちはみな、社会の要請によって、病原菌の実験中、試験飛行中、軍務遂行中に、それぞれの務めの要請に殉じているのだ。今生きている母(増子倭文江)が登場する。愛する息子たちが社会の要請のために次々と失われていったことが納得できない。社会の論理と母の論理は別のものだという事だ。今ここでは内戦がおこり、最後の今生きている息子も戦いに出ようとしている。死んだ男たちは五男を戦場に誘い、母は反対する。ラジオ(当時のマスコミ)は戦場へ参加せよと煽り立てる。母はそのすべてに抵抗する。
戦闘が進み一家の広間にその戦況が伝わってくる中で、男たちと、母との激論が繰り広げられる。
さて、面白いのは、その議論は耳新しくもなく、家族か、社会か、とか、男と女の役割とか、戦争の是非はもう何度も繰り返された論争で、しかも、よくある場面設定と人物設定、事件の進捗なのだが、観客の心をつかんでしまうというところだ。
それは大きくは、百年前の現代戦争が始まった頃の社会構造の問題がいまも形を変えながら根づよく残っている事が根底にあるからなのだろうが、テーマと素材から論点を浮き上がらせずに現代人にも見せてしまうことに成功している。たぶん、それはギリシャ演劇以来演劇が持っている特質、いや演劇のみが、と言ってもいいかもしれないが、生者と死者を同時に登場させ、現代の生者が演じるという独特の演劇リアリティのなせる業によっているからだろう。チャペックのSFの不思議な味はそこを原点としている。
演出は文学座の稲葉賀恵。小劇場のうまい若手を起用し、大谷亮介とか鈴木一功と言うくせ球も調教して一つの演劇世界を創り上げている。
それは、近代劇から現代劇に流れるリアリズムではないもう一つのSF作家らしい企みもあっただろうが、それは当時、本人も気が付いていなかったことだろう。ひょっとすると今舞台にいる人たちも気づいていないかもしれない。そこがこの不思議な芝居の成功の大きな要因だと思う。俳優は全員ところを得て、好演。2時間。休憩なし。
父地下アイドル。【公演中止(4月29日14:00~ライブ配信あり)】
fukui劇
王子小劇場(東京都)
2021/04/29 (木) ~ 2021/05/03 (月)公演終了
ルースター
劇団スポーツ
王子小劇場(東京都)
2021/04/21 (水) ~ 2021/04/25 (日)公演終了
蝶の筆
CROWNS
王子小劇場(東京都)
2021/05/12 (水) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/05/18 (火) 18:00
元X-QUESTの塩崎こうせいが立ち上げたユニットの旗揚げ公演。激動の大正期を扱った重厚な芝居だった。
進歩的な大東京新聞で記者をしながら小説家として名を上げようとする3人の男たちが、大正という激動の時代を通して成長する姿を描く。経験ある役者が多く、安心して観ていられる芝居だった。ただし、その分かえって一場面が重厚に演じられ過ぎて重く感じてしまった。なぜ今大正を、という気もした。冒頭に流れる「おっぺけぺ節」は明治期に流行った歌で、ちょっと時代が違うのだけど…。
東京ゴッドファーザーズ【5月2日~5月11日公演中止】
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/05/02 (日) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
時期外れのストーリーになってしまったが、主役3人や他の俳優たちが好演していてクリスマスらしい寛容な気分に浸らせてくれる。贅沢に迫りのセットを使うが基本的にはシンプルな舞台装置と俳優たちの演技自体で次々と場面転換するところは興味深い。見所ある面白い公演なのにチケットが定員50%で販売停止になってしまったのは残念。
DOORS
森崎事務所M&Oplays
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/05/16 (日) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
半勃ニョッキ
Peachboys
シアター711(東京都)
2021/05/18 (火) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
東京ゴッドファーザーズ【5月2日~5月11日公演中止】
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/05/02 (日) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★
今この芝居をなぜ30公演も打とうとするのか理解できない。最初の十公演ばかりは突然のコロナ宣言延期で止めたようだが、それにしても、大劇場で30公演は東宝松竹でも逡巡するだろう。中身はアニメの劇化で2・5ディメンションの企画の発想と似ている。クリスマスストーリーのような物語でその時期に家族で見るにはいいかもしれないが、梅雨時に見るのはいかにも時節外れ。アニメでは面白そうな話でも芝居に良いとは言えない。それに物語の進展もアニメなら物語の偶然や飛躍、感情のアップがいいだろうが、芝居では無理やりクライマックスの連続で賑やかなばかりで落ち着かない。俳優はジャニーズの松岡昌宏が女形でつとめ、相手役はマキタスポーツに夏子。キャスティングの狙いも見えず、演劇的には詰まっていかないし、何か新しい趣向があるかと言えば、何もない。
去年の年末企画だったのかとも思うが、アニメの成功作を舞台に移すのは簡単ではない。来年「千と千尋」をミュージカルにするという東宝などはものすごく慎重だ。新国の企画は人気のあるアニメとジャニーズタレントに乗ろうというだけではないか。早い話、この上演には、「斬られの仙太」(これはなかなか良かったが)とこの作品、それにこの後の井上ひさしの推理劇「キネマの天地」の三作を並べて、今年の柱として「人を思う力」というシリーズタイトルがついているが、どこに共通点があると思っているのか聞かせてほしい。全く別の作品ではないか。きっと今の政府に倣って、「しっかり適切に考慮した結果」などと言いそうだが、そういういい加減さは同じ国立でも学ばないでほしいものだ。
客は正直、入りは二割そこそこ(18日夜)、久しぶりに見るガラガラの入りは客の正直な反響である。なんだかどこまでも無駄な税金興業と言った感じだが、新国は誰もその責任を取ることもない不思議な文化庁興行部なのだ。
みえないランドセル
演劇集団 Ring-Bong
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/05/13 (木) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
文学座俳優にして「書く人」である山谷典子女史のring-bong観劇は久々の二度目。休憩10分を挟み二時間半とアナウンスを聞いてお~と思う。前に観た芝居は(失礼ながら)この時間に耐えるだけの戯曲が書けるという印象を持たなかった。
だが開幕し、出だしから作劇に磨きがかかった事を実感。母子の世界と、なぜかパン屋に設定されたセミパブリック空間に自然に入り込め、序盤で登場する殆どの人物らを手際よく紹介し識別もしやすい。休憩後の二幕は照準を当てた人物に接近し、生々しさを増す。深みに降りていく筆捌きは中々。ここで漸く登場となる、水野あきの貢献が大きい。
ただ大団円は「長い」と感じる自分がいた。その感じ方はよく女性だけの会話の場に立ち会った時のそれに似ている気が。性差、とは簡単に言いたくないが・・
おかめはちもく
Nakatsuru Boulevard Tokyo
サンモールスタジオ(東京都)
2021/05/16 (日) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/05/17 (月) 19:00
トラッシュマスターズの作・演出の中津留章仁が主宰する別ユニットの実質的旗揚げ公演。テイストは違うが面白かった。
とある地方のテレビ局が舞台。かつてこの局が行なった市議会の不正を訴える報道の結果、議員が次々と辞職する中で、選挙で若い議員が増える。それから4年経って、次の選挙が始まろうとする時期に、その事件を追った報道をしようとするが…、という展開。富山市議会に題材を取ったものと思うが、中盤でしょうもない議員が述べる言い訳が、いかにも、なので普通の落下点に落ち着くのかと思ったら、最終幕の20分で意外な展開を見せる。深く考えさせられる内容ながら、笑いも忘れていないなど、中津留の巧さにやられた。
Smells Like Milky Skin【5月8日~5月11日公演中止】
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2021/05/08 (土) ~ 2021/05/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
あらすじを読んでシリアスな舞台かなと思って観劇したが、
コメディ全開の舞台で笑えた。設定もかなり特殊だったので驚いた。
自分の想像していたものを軽く超えてきた作品を劇場で見れて良かった。
ただ、最後の家族のシーンで翻訳担当?のあの人があの場にいるのは
蛇足に思えた、家族水入らずのシーンで良いところなのに
余計なうるさい相槌や大声はいらなかったと個人的思えた。
Jet Ghoster - ジェット・ゴースター -
WizArt
武蔵野芸能劇場(東京都)
2021/05/15 (土) ~ 2021/05/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/05/17 (月) 14:30
座席1階2列5番
価格5,000円
今回初めてミュージカルを鑑賞させていただきましたが、皆さんの熱意が直接伝わりとても良かったです🤗
特にパティ・ミラーのソロ歌唱には感動しました!
アーカイブも楽しみです😃
うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた
劇団チャリT企画
座・高円寺1(東京都)
2021/05/16 (日) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
タイトルがあまりにも衝撃的で「うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた」、どうなることか、どう展開していくのか。初めから引き付けられ続けました。
うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた
劇団チャリT企画
座・高円寺1(東京都)
2021/05/16 (日) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
客入れのSEに何故か『あばれはっちゃく』、それだけで心を掴まれた。
良く出来たホーム・コメディを観ていたつもりが、いつしか滅茶苦茶シリアスな社会学・文化人類学を突き付けられていく。
凄く奥行きと世界観のある脚本で「SNSなんか皆さっさと手放してしまった方が良い」、帰り道そんな気分になること請け合い。
とにかく面白いし、いろんなことを考えさせられる作品。
高齢者暴走事故、SNSデマ拡散、ネットリンチ、You Tuber、Uber Eats···、全てが絶妙に絡み合ってしかも喜劇であり続ける90分。
父親役梶野稔氏と母親役の石本径代(いしもとみちよ)さんの醸し出す安心感が観客を自然と作品世界にいざなう。石本さんの存在感は作品の軸となっているようだ。埴生雅人(はぶまさと)氏演じる娘の婚約者のキャラがまた面白い。微妙にズレた笑いをちょこちょこ巻き起こしていく。
DOORS
森崎事務所M&Oplays
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/05/16 (日) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/05/17 (月) 18:00
仕事終わりにオススメな、世界に没入してすっきり戻ってこられる、楽しい舞台。
役者さん6人の1人1人がしっかり存在感を残すし、舞台自体の動きがとても良かった。途中で一瞬踊り出すのが謎だったけれど、それすらも受け入れられる魅力的な舞台作りにウキウキ。
人生の「選択」がキーになる作品だと受け取った。メインの高校生の女の子2人がお互いに言いたいことを言って、徐々に関係性が変わっていくのに憧れた。客観的に人生を見つめられる貴重な機会でした。
伊藤万理華さんの声が良い。
後半戦にももう一度、観てきます!
超ではない能力
24/7lavo
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/05/13 (木) ~ 2021/05/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
旗揚げ公演なので初日に来たかったが、先週まで動かせない用事があり、今日の千穐楽へ。個人的には、黒子の池田さんのタイミング、地下アイドル役の環幸乃さんがお気に入り。劇団員の3人はもう少し長尺の舞台を観てみたい。次回も期待してます。
うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた
劇団チャリT企画
座・高円寺1(東京都)
2021/05/16 (日) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
祖母が「アクセルとブレーキを踏み間違えた」とツイートしたのが元で、何の根拠もなく、保育園児を轢き殺した、助手席に若い男が乗っていたと、ニセ情報がどんどん大きくなって、家族も、関係ない人も巻き込んで、ネットの悪意が暴走していく。無責任な情報捏造のネット民や、匿名のツイートを人格化して見せていたので、馬鹿馬鹿しさがよくわかります。90分
今に最新の社会問題を舞台化した機敏さと感度が良かった。多少のご都合主義や無理筋は目をつぶって、大たんさと新鮮さに拍手したい。
つぶやき五郎(実は中学教師)の哲、孫娘の溝端藍、翔のママの山崎未来、ゴスロリファッションの大里結衣が良かった。
みえないランドセル
演劇集団 Ring-Bong
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/05/13 (木) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/05/17 (月) 14:00
座席1階
テーマは児童虐待。重い話になりそうだと思っていたが、多彩な登場人物を配置し、押さえるべきところは押さえてハッピーエンドに仕上がっている。
前回の緊急事態宣言で上演が延期になった。その時も申し込んでいたので、期待を膨らませて久しぶりのアゴラへ足を運んだ。
この物語が秀逸なのは、主要な登場人物の女性にそれぞれ「過去」を持たせているところだ。生まれたばかりの娘を放置して男と出て行ってしまう主人公・遥に寄り添い続ける助産師の雪だが、彼女は専門職としての倫理観からだけで「特定妊婦」であった遥の支援をしていたわけではなかった。(特定妊婦は、妊婦検診に訪れないなど、出産や子育てに課題があると思われる女性のこと。保健師などによる支援の対象になる)。ネタバレになるので詳しくは書かないが、遥が雪に「子供を産んだこともないのに、私のことなんかわからない」と言い放ったところから、一つの糸がほぐれて物語の幅を広げていく。
同様なことが、赤いランドセルを背負って夜間中学に通う84歳のみどりの過去でも明かされる。彼女も赤ちゃんの泣き声を聞きつけて何度も遥の家のドアとたたき心配をするのだが、彼女にとっても「子供を育てる」というキーワードに絡む一本の糸が舞台に絡んでいく。
いい脚本だと思う。すすり泣きをしている人が客席のあちこちにいた。自分も最近、NHKの「透明なゆりかご」の再放送で見たケースと同じような場面が出てきて、思わず感涙を誘われてしまった。
山谷さんの前回の上演延期でのメッセージなどから、コロナ禍と深く関係している物語かと思ってしまったが、そうではない。コロナ禍の生活という設定だけに役者さんは皆、マスクをつけている。マスクなどに絡んで笑いを取るようなところはあったが、この物語はいつ上演されても客席の心をしっかりとつかむ力があると思う。もちろん、コロナ禍での子育てがお母さんをより孤独にし、虐待を生むという背景は示唆されているのかもしれないが。
最後にもう一つ秀逸な点を。この物語の舞台であるパン屋さんの近くの広場に児童相談所の建設が計画されていて、登場人物の中にも「迷惑だ」という気持ちを述べた人がいたというところだ。子どもや年寄りのことなど日ごろはあまり関係がないと思っていると、児童養護施設や特別養護老人ホームなどによくない印象をもって「うちの近くにできるのは嫌だ」と感じる人は少なくない。この舞台では、最後は子どもの笑顔によって救われるという物語でありながら、児童相談所が迷惑施設だという会話を出しているところに、この物語を貫く作者の強いメッセージを受け取ることができる。
いい舞台だった。みどりが背負っていた赤いランドセルが、遥の娘・初音ちゃんに背負われる日が来ることを祈りたい。