満足度★★★★★
濃厚な群像劇
犯罪に直接的にあるいは間接的に関わらざるをえなくなった悪意のない小市民達を、中立に近い視点から綴る渾身のストレートプレイ。誰がWキャストなのかわからない位役者も皆魅力的で、二時間がとても短く感じた。
一幕ものという、観客にとっても心理的に逃げ道のない舞台の上で、一番その場に一緒にいちゃいけない人が最悪のタイミングで集まってしまうスリリングさ。
誰も間違っちゃいないのに、自分のリアリティからどうしても対立する立場に立たざるをえなくて起こる修羅場の緊迫感は圧巻。実際にこんな場面に出くわしたら脱兎の如く逃げたいのだが、きっとそうもできずに背後の人々のように「ひー!」とか思いながら言う通りにしちゃうんだろう。
メインの人々だけではなく、この修羅場に居合わせた人々全ての人生が何か少しづつ変化を迎えていく様子をさりげなく描いていて、群像劇としてとても見事。
そしてびっくりすることにこれだけ描いてちゃんと笑わせている。最高にギスギスしたシーンで、妙になさけなく笑わせてくるバランスがいい。