ザ・マッチメーカー 公演情報 中野成樹+フランケンズ「ザ・マッチメーカー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    抜群のセンス
    お芝居の質感というか肌触りが抜群によくて、
    時間を忘れて見入ってしまいました。

    昔の映画に出てきそうなアメリカの香りを失うことなく
    でも、しっかりと斬新さが織り込まれて
    さらには人生を俯瞰するような場所にまで
    観る側を導くしたたかさを持った
    出色の舞台でありました。

    ネタバレBOX

    恣意的にどこか薄っぺらい装置、
    一幕はそのなかで、
    物語の仕込みがしたたかになされていきます。

    舞台装置にどこか似合った
    平板を装いながら、
    隠しきれない表現の豊かさとともに
    物語の骨格が組み込まれていく。
    お芝居がきっちりとなされていくなかで
    たとえば登場人物の説明口調や主人の独白などが
    心地よくリアリティを踏み出して、
    観る側を飽きさせない小ネタが
    ジャブのように効いて。
    役者たちのお芝居が場を凌駕するほどに豊か、
    登場人物それぞれの、
    どこか人を喰ったような人物表現の秀逸に目を奪われる。
    びとりひとりの人物像がくっきりとふくらみを持って描かれ
    舞台装置や照明、さらにピアノの効果も抜群、
    作りこまれた間や演劇的な約束や嘘までもが
    舞台の深浅をシーンに合わせてしやかなに操って。
    そのなかでキャラクターたちのロールが観る側に
    実はとても丁寧に渡されていく。
    この物語の狂言回しの存在もさりげなく埋め込まれて、
    気が付けば必要なものはちゃんと観る側の手のうちにあって
    舞台の流れに心地よく浸されているのです。

    その仕込みが2幕以降に、
    さりげなく、でも、目を見張るほどに機能していきます
    翻訳劇ってシチュエーションを理解したり
    人物の名前を覚えることに
    集中を裂かれたりするのですが
    この舞台にはそれがない。
    原作が持っているであろうコメディの底力が
    観る側をがっつりとつかんでいく。

    物語の構造が見えているから
    ベタな舞台の造りが
    安っぽさにならず
    ニュアンスを強調するメリハリになっていく。
    その強弱が物語の表層的な部分を笑いに変えていくだけでなく
    登場人物たちの背負う普遍的な心情を
    現出させていく。

    帽子屋のドタバタのリズムの良さ。
    ベースは一幕でもらっているから
    広がっていくシチュエーションに迷うことがなく
    その先にある帽子屋の女主人の
    最高のレストランへの執着にも唐突さがなく
    突き抜けたように可笑しい。
    舞台に醸し出される
    なにかが解き放たれたような混沌は
    彼らにとって場違いな
    バッテリーパークのガーデンレストランで
    慇懃で洗練されすぎたギャルソンたちや財布の流れに煽られながら
    問答無用な面白さとともに
    さらに満ちていくのです。

    そこまでに作りこまれているから
    終盤、
    舞台がコンサバティブな雰囲気から
    リフトオフして現わされるものが
    物語から乖離せずにしっかりと伝わってくる。
    さりげなく壁の部分に物語のタイトルを書きこんで、
    観客を内に入れず外において
    物語の収束を俯瞰させて・・・。
    ちょっとしたこと、馬鹿と分別、そしてお金・・・、
    冒頭に主人公の一人として
    あざとくしたたかな台詞にのせられ紹介(!?)された
    その女性の言葉が
    物語をエッジの効いた小粋な人生のエッセンスへと
    昇華させていく。

    冒頭から終幕まで
    役者たちのお芝居には抜群の安定感があって。
    美術にも物語が映えるような工夫や創意に加えて
    広い舞台をきゅっと濃縮させるような力もあって。

    場ごとの雰囲気にも魅せられて
    一つずつのシーンに飽くことなく取り込まれて。
    すっと拡散していく笑いと
    コンテンツをしっかりと持った笑いのそれぞれの洗練に
    2時間ごえのお芝居があっという間。

    良い舞台を観たときの
    ほっこりと満ちた高揚感とともに
    劇場をあとにすることができました。

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    2011/03/05 08:13

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