道路 公演情報 東京演劇アンサンブル「道路」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    今、考えなくてはならないこと
    さまざまな演出により、アゴタ・クリストフの戯曲が現代に発したモノが伝わってきた。

    ネタバレBOX

    SFであり、一種の不条理劇であるとも言える。

    初めに登場する高速道路の設計技師は、明らかに現代の人である。高速道路上で事故に遭い、ガソリン缶を持ち、高速道路をさまよう。
    しかし、そこは、彼のいた時代でも場所でもなかった。
    まるで、パラレルワールドのような近未来の世界。文明も自然も人々の希望も目標も何もない世界だったのだ。

    「道路(道)」とは、多くの場合、「人生」と読み替えることが可能であり、今回の舞台でも、それを暗示する台詞やシークエンスが多く見受けられた。

    しかし、「道路」は、社会主義の計画経済に対する象徴(効率化などの)でもあるのだが、実のところ資本主義の象徴でもなかったのだろうか。
    一方向にしか進むことが許されず、立ち止まることも許されない。そして、立ち止まることは「死」を意味するということも、社会主義的(あるいは全体主義的)ではあるのだが、それは、「発展」しか道筋がない資本主義社会にも通ずるものでもある。「死」は他人の「糧」となるということに至っては、資本主義そのものではないのか。

    すなわち、作者のアゴタ・クリストフ氏は、50年代にハンガリーから亡命し、西側に出たのだ。したがって、西側での生活のほうが長く、そこで出会った「資本主義」の姿に、大いに驚き、戸惑い、落胆もしたのではないだろうか。

    資本主義の名の下に、破壊される自然や人々の暮らし、そして希望や感情。それは、かつて、社会主義の自国で感じたものと、姿は変わっていても、同じではなかったのだろうか。
    そいういったものが、「道路」の世界に込められているのではないのか、と思ったのだ。

    また、冒頭に出てくる男は、ラストに実は交通事故で死んでいたことがわかる。つまり、冒頭の彷徨自体の場所は、死ぬ前に見た幻覚かもしれないし、あるいは死の世界だったのかもしれない。

    その世界で彼は「もう道路は作りません」「庭師になります」と神に告げる。それは、取りも直さず、彼の口を通して、現代に生きる人々が考えなくてはならないことが発せられたのである。
    つまり、今なら、希望も何もない世界になる前に、経済の発展に隠れたむやみな開発などを押し止めることができるかもしれないということなのだ。

    台詞回しの雰囲気は、ややクラシカルな印象があるものの、舞台の設置方法や、さまざまな演出を加えることで、現代によりマッチさせていた。

    特に、映像の使い方は空間と台詞に深みと奥行きを見せていた。台詞やそのシークエンスに関係する文章が壁面に現れることで、それが実現されていたと思う。

    また、生演奏の効果もあったし、観客席の後ろを歩かせるということで、観客席を「道路」で囲み、舞台への臨場感はより増していた。

    若い演出家の手によることの効果は十分にあったと言えるだろう。

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    2011/02/16 07:38

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  • teeakirさん

    コメントありがとうございます。

    私が感じたのは、今回の舞台は、特に新しく若い感性によって演出された舞台であったので、演技そのものについても、もっと揺さぶってもよかったのではないかということです。
    従来の演技の考え方とは違ったような、という意味においてです。

    もちろん、従来の演技を否定するものではなく、演目と演出によってそれが使い分けられたら素晴らしいと思った次第です。

    なお、このような感想でよろしければ、どうぞお使いください。

    今後のご活動に期待いたします。

    2011/02/25 04:02

    >アキラ様
    ご来場ありがとうございました。

    この公演に関しては、
    寓話的であり、
    演出によってはどういう風にも、料理できる、
    そういう要素のある芝居だと思って取り組みました。
    しかしながら、そのベースにあるものは、
    アキラ様がおっしゃるように、しっかりと根深く描かれています。
    自身の体験から、物語を紡ぐタイプのアゴタ・クリストフは、
    まさに、その社会主義と、資本主義を体験し、
    絶望したといえると思います。

    そういう部分が、
    通奏低音として、舞台にのるように、
    演出は心掛けていたようです。

    また、ぜひ、ご来場いただければと思います。

    御迷惑でなければ、
    もしかしたら劇団のHPや方向などに感想を使わせていただくこともございます。
    もし、掲載不可の場合は、お手数ですが、メッセージにてご一報ください。

    ご来場どうもありがとうございました。

    2011/02/21 10:56

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