満足度★★★
見立ての力を試されている? あるいは…
HPのブログに写真が載っていて、舞台装置にはもともと興味を持っていた。実際に見てみたら、想像していたよりもっと多くの工夫があって、とても面白かった。まさか向こうの世界まであるとは・・・
細部まで丁寧につくられていることも良かった。
そうした装置を作るだけでなく、空間の使い方にもいろいろなideaがあって面白かった。どれもこれも素晴らしくって感心しっぱなしだった。
でも・・・castingに難があって損していたかも。
白い壁をフランスの田舎の古城に見立てることはなぜか許せるのだけど、人間はどうしてか難しい。
お嬢様はお嬢様らしさを持つ女性に、下男は25歳の美男に演じて貰えたら、内容の理解はもっと深く、すっと出来たかもしれない。内容とか難しいことは別にして、正直、もっと香気を放って、危なさを感じさせて欲しかった!!!
お嬢様の内面が複雑なので、実際に高貴な女性なのか演じていた通りのガサツなプッツン女なのか分からない。高貴でありながらガサツを装っている場合、そういう身振りや雰囲気を醸して欲しい。
同様に、下男のジャンもどうしてそんなにジュリーお嬢様に気に入られたのかイマイチしっくり来ない。もっとも近くにいる若い男だから、話が面白いから・・・? それだけじゃない見かけの説得力があればもっと危ない雰囲気が出たのに〜ともったいない気がした。阿部さんの大ファンだけにこういうことになると大変悔しい。
この脚本は作品が出来た場所と時代の問題を強く意識していると解釈しておりまして、それを現代で公演することでそもそも大分遠いっていうリスクがあるわけで、何か狙いがあってこうしたのかもしれないけど、こういう演目の場合はなるべく本能とか直観で分かるようにしても良いと思う。
ただ、これだけ書いておいて、実は、下男のcastingについては観ているときはそんなに気にならなかったんですよ。一緒に観た友人に言われて、「あ、そうか」と後からはっきり気づいたという感じ。思い返してみたら、いろいろもっとこうなんじゃないかああなんじゃないかとモコモコ・・・
つまり、あとから補完しようとするといろいろ出てくるんだけど、板の上に表現されたものだけ観ていたらそれはそれで理解できた気分になったっていうか。
以上全部をひっくるめて(禁欲的な舞台装置も含めて)考えてみると、実はその、色気とかそういうものは極力排除したかったのかも。そういうものがフレデリック・フィスバックさんが一番伝えたいことの邪魔になるとかでね。