満足度★★★★★
愛することと、生きること
演劇を愛している=人間を愛している。
つまりは、生きるということに、まっすぐに向き合っていくこと。
長塚圭史氏は、そういう表現者なんだな。
愛していると抱きしめておきながら、自分の力で生きろと突き放されたような・・・、
三好十郎はそんな作家だ。
そして、それは媚薬のようであり、劇薬のようであり、癖になる。
開幕の口上で、長塚氏は70年前の戯曲を上演するにあたり、「現代」という言葉を強調した。
現代的というのは、演出も俳優も自分の「現代(いま)」を背負い、戯曲と対峙し、観客に届けることだと思う。
藤谷さん、すばらしかった。
田中さん、正直言って期待はしていなかった。けれど、二幕以降、どんどん引力を増し、最後には人相まで変わっていた。戯曲とともに生きていた。
一部、俳優さんが「現実」を背負うという、「作業」段階であがいているのが見えて惜しかったけど、まだ上演中。ますます深まっていくと思う。
私は休憩2回で4時間ぐらいの作品が、一番しっくりきて好きなので、上演時間にも満足。
「演劇には力がある」を実感できる舞台。多くの人に観てほしいと思う。