満足度★★★
形式と物語
能の作品を現代的に翻案した3本オムニバスの公演。キャスト、スタッフとも豪華で期待していたのですが、ちょっと物足りなく感じました。
『春独丸』
親と子の愛憎の物語で久世星佳さんと岡本健一さんの演技が良かったです。アンサンブルの役者6人によるダンス/マイム的表現はいかにも小野寺さん的な動きで面白かったです。しかし、やはりダンサーでないとちょっと難しいかもと思いました。
『俊寛さん』
島流しになった者たちの物語で、狂言のスタイルで演じられました。
ゆるいギャグが多い、気楽に観られる作品でした。
『愛の鼓動』
女に騙される男の話で、ある特殊な職業に設定されていたのが効果的でした。ベンガルさんの冴えない中年男性っぷりと、西田尚美さんの気の強い女性の対比が印象的でした。天井高のある空間を生かした美術も素敵でした。
3本の構成が能の公演の舞ー狂言ー能みたいになっていたり、それぞれの作品で現代の政治的な話題を取り入れていたりと趣向を凝らしていたのですが、オリジナルの能の方が作品として強いと思いました。
個人的に能は物語より形式に独自性があると思うので、現代劇の形式で音響や照明などの要素があればあるほど、逆に想像力を働かせる余白がなくなってしまって、奥深さが失われているように感じました。
来月、同じ演目を日芸の学生たちが上演するので、そちらも楽しみです。