グロリア 公演情報 ハイリンド×サスペンデッズ「グロリア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    良作に芸達者揃いで、見応えあり
    多忙で観に行けないかと思いつつ、どうしても早船作品は外せないと、無理して行った甲斐がありました。

    ハイリンドは初見でしたが、サスペンデッズの役者さんも含め、皆さん、驚く程芸達者ばかり。

    現代の日本と、戦時中の日本とアメリカ。時や場所が変わり、役者さん達も何役も兼ねながら、そのどの役にも命を吹き込んだ演技がお見事でした。

    何しろ、早船さんの作品には、他作家にはない独自性があり、きちんとご自身で生み出された作品を観る安心感が、観劇好きの心を芳醇に満たして下さいました。
    観劇できたことに、心から感謝します。

    ネタバレBOX

    冒頭の僅かな台詞のやりとりで、和彦と沙織の人間関係を観客に理解させる早船さんの作家としての力量にまず感服します。

    最初、取立屋として登場する伊藤総さんの言う、「会社を潰す経営者は、3つの内のどれかだ。馬鹿か、運が悪いか、馬鹿で運が悪いかの3つ…」という意味合いの台詞に、何て言い得て妙!と大納得。

    戦時中や、風船爆弾の犠牲者の場面は、内容的にはかなり、辛い部分なのに、こうした、センスあるアイロニーや構成の巧みさで、常にどこかで、笑えるのがまた早船作品のおつなところ。

    中でも、チャーボーが、頭のとさかを脱いで、瞬時に戦死した父に豹変するところなど、やり方次第で、はちゃめちゃな舞台になる危険性もあるのに、相当な演出力なのか、これがまた、この舞台の独自性を効果的に表出してお見事でした。鶏の所作の素晴らしい佐野さんの真摯な演技には感動さえしました。

    この舞台の素敵さを観ていない方に説明するのは難しいので、できれば、たくさんの方に体感して頂きたくなりました。

    欲を言えば、風船爆弾の被害者のアメリカの場面がもう少しだけ比重が少なくても良いのではという印象でした。
    和彦が祖母の手記を読み終えた後のオレゴン州の場面なので、観ている方としては、そろそろ終盤という意識がどうしても先行し、その割にはまだ終わらないのかとややですが、冗長に感じるところがあり、残念な気がしました。

    風船爆弾の製造シーン、実際の映像の前で、出演者が、ジェスチャーでのみ、演技をする演出が、とても秀逸で、一番目頭が熱くなりました。

    役者さんは、誰もが甲乙つけ難い、名演技、演じ分けでしたが、中でも、仕事にあぶれて神経をおかしくしている患者と、戦時中の青年と、アメリカのマセ餓鬼を、それぞれ、実にリアルに体現された伊原さんの役者力には脱帽でした。

    ハイリンドも、これからは、観たい劇団のひとつになりました。

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    2010/10/20 00:55

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