グロリア 公演情報 ハイリンド×サスペンデッズ「グロリア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    これはもう、舞台でしか味わえない感覚
    計算された、役者と登場人物の重ね方が物語に重層感と深みを与え、飛び越え方が独特のおかしさ(笑い)を含みつつも、丁寧に物語を形作る。

    ネタバレBOX

    時間軸を自由に移動する話(場所も含めて)は、よくあると言えばあるのだが、それだけでなく、性、種まで移動させる話はそうない。

    しかし、それが飛び道具的に使われているかと言えば、そうでもなく、それによっての面白さが醸し出されているのは確かなのだが、そうであることにより、物語の本質のようなものが丁寧に表現されていたように思える。

    特に、チャーボーと呼ばれるペットのニワトリが、勝良の父となって現れたときには、会場には笑いが起こったが、その時点ですでに海の底にある父であることがわかっただけに、反射神経的に笑っても、切なくて本当は笑いたくないシーンだったりする。
    また、観客として、これから死んでいくという結果を知りながら見る、アメリカの子どもたちのはしゃぎようや、牧師さんを揶揄する姿も、実は笑いながら切ないのだ。
    そんなシーンがとてもいい。

    そんな感じの「役の重ね方」がうまいと思った。単に少人数で何役もこなすということではなく、意図があっての重ね方なのだ。

    ペットというよりは、勝良の唯一の友人であるニワトリのチャーボーと、徴兵されて軍艦に乗せられた勝良の父と兄。チャーボーは出征する下宿人のために潰されて、父と兄はお国のために戦死する。そんな状況が重なる。

    壊れかけた夫婦の和彦と沙織、そして、ちょっとしたことから永遠に分かれてしまった親友のトキ子とハマ子、さらに夫を励ましつつ、非業の死を遂げてしまうジェーンとその夫アンディ、この3組の役をそれぞれ同じ役者が演じていくことで、時間だけでなく、世界の重なりまでも見えてくる。

    こういう深みがたまらない。

    和彦だけがトキ子を演じるときに、背広姿のまんまというのも、驚きつつも、うまいと唸る。祖母の自伝を追体験していることがわかるのだ。

    そして、最初のほうで、看護婦を男性が演じ、何回も出てくるところは、その後のトキ子の登場のための水慣らし(プールに入る前に身体を濡らすような)みたいな役割であったと気がついたときに「ああ、うまい」と思った。

    物語の軸になっている風船爆弾の話については、特に目新しいことはないものの、風船爆弾という兵器を通じて結ばれてしまった、市井の人たちの生活がそこにあった。

    声高にならずにじっくりと迫り、明るさもありつつ、美しい話となっていた。
    目頭が熱くなる場面も多々あった。
    人と人とのつながりがとても自然で美しいのだ。

    そして、この物語をわずか7名で演じきった役者たちに大きな拍手を送りたい。

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    2010/10/19 06:04

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  • genieさん

    コメントありがとうございます。

    いい舞台でしたね。

    なんていうか、少々語弊がある言い方かもしれませんが、ストーリーそのもの(起伏というかオチ的な要素)で観客を楽しませるのではなく、その時代での「普通」の出来事を限られた時間の中で丁寧に見せることで、深みというか、人々の背負った物語を見せていく、という演出がいいと思いました。
    役者の方もそれに見事に応えていましたね。
    衣装も考えられていて、安心して観られたということもありました。

    2010/10/20 07:45

    アキラ様、

    コメント拝読し、うれしくて、そう、そう、そのとおり!と手を打ちたくなる気持ち。
    私の言葉足らずのもどかしさを、完璧に表現してくださいました。

    お芝居って不思議なもので、十人十色、人のよって意外と受け止め方が違うものですが、
    私が感動共感したのと同じように、心打たれた方がいらした事実がうれしいです。

    ホント、たくさんの人に見てもらいたいなぁ。
    …、って思える作品に出会う事もなかなか無いことです。

    2010/10/19 22:52

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