Project BUNGAKU 太宰治 公演情報 Project BUNGAKU「Project BUNGAKU 太宰治」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    好企画!
    まず、この企画に万歳三唱。

    最初に仮チラシで、参加団体とテーマを見て、「これは行きたい!」と思わず叫んでしまうほどのインパクト。
    そして、実際に目にして、耳にして、「行ってよかった」と心から思える公演だった。

    アフタートークを入れて2時間という時間配分も、気が利いている。

    ネタバレBOX

    ■広田淳一『HUMANLOST』
    ひょっとこ乱舞でいつも見せているような言葉や動きのアンサンブルが美しい。しかし、いつもの「ひっとこ乱舞フォーメーション」と思わず呼んでしまうようなほどのスタイリッシュさまでには昇華しきれてない恨みが残る。
    つまり、いつものように、ダンスや言葉の重なり合い(音楽のようなリズム感)を、グルーヴにしてこちら側に届けてほしかった。

    題材自体が、淡々とした日記形式ということと、広田さんが一から書き上げたものではないので、世界の広がり方が足りなかったのかもしれない。
    それは、狂人たちの「脳内」へ広がりを見せるような方向へ、広田さんが持つであろう、理系のチカラで、原作を再構築(破壊した上で)してほしかったということでもある。

    金魚鉢に石を放り込み、突き抜けるような声で日付を刻むスタイルは秀逸だった。



    ■吉田小夏『燈籠』
    独自の手法による、時間と空間の構築と交錯が見事で、それが美しいと感じるまでに仕上がっていた。それはいつもの小夏ワールドと言っていいだろう。
    そして、短編とは思えない濃厚な世界が広がっていた。

    太宰の作品なのに、女性ならではの視点が効いていて、強い意志と根底に流れる情念を見事に表現していた。
    着物での所作もきちんと計算されていたし、文楽を彷彿させるような動きや、シーンごとのキメ(見栄)も美しい。

    福寿奈央さんの一気呵成の台詞には「凄い」の一言。感情の高め方というよりも、内側への籠もらせ方が見事。

    しかし、前後に流れたエゴ・ラッピンだけはしっりこなかった。彼らの曲は主張が強すぎて、せっかくの余韻をわざわざ消してしまったようにしか思えない。


    ■松枝佳紀『ヴィヨンの妻』
    先の2本に比べると、ごく「普通」に、ストーリーを見せてくれた印象。

    猥雑の裏側にある、「聖」なるものが、ときおり顔を出す演出がうまい。

    ただし、『燈籠』の後だったせいもあるのだが、動きなど、全体的に雑さがつきまとっていたのが残念。
    また、衣装は、ヤフオクで「本物」を落札して使ったとのことだが、本物使うのならば考証も「本物」にすべきではないだろうか。本物を使えば本物になるわけではないのだ。


    ■谷賢一『人間失格』
    構造がうまい。
    現代に物語を寄せつつ、いつの時代にでもある、普遍性を露わにしていた。

    主人公の陰にいる男の設定が効いていた。照明などが効果的で、登場人物たちの動きにより、舞台に広がりが見えていた。

    主人公を女性が演じるという設定は面白いと思ったが、彼の時間(年齢)の経過が(表現・演出として)イマイチ伝わらなかったのが惜しい。



    4つの演目を観て感じたのは、やはり、ひょっとこ乱舞と青☆組の舞台が自分には合っているということだ。それを強く再確認したと言ってもいい。

    今回の企画の目玉の1つでもある「順位付ける」については、順番ではなく、持ち点10点を配分するほうが、好きだったものとそうでなかったものとにはっきり差が出たし、どっちもよかったものに対しては、同点を付けたりできたので、もっと気持ちを反映できたように思えた。

    とは言え、4者4様で、その要素を凝縮した舞台が観られたのはよかった。ぜひこの企画を続けてほしいと思う。
    Project BUNGAKU というタイトルではあるが、そのときには、文字だけで作者のイメージを広げやすいBUNGAKUではなく、マンガなどをテーマにしてはどうだろうか。とても困難なものになりそうなだけに、観る側の期待も高まるのではないだろうか。手塚治虫とか藤子不二雄とか梅図かずおとか岡崎京子とか、水木しげるとか(笑)。

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    2010/10/08 09:47

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