満足度★★★★
雄弁な沈黙
近未来の日本が舞台で、エリートが集まる研究所「アカデミー」に関わる人たちの物語でした。
登場人物たちはそれぞれ愛する人のことを思って行動するのですが、その思いがすれ違って悲劇が生まれるという古典的な物語構造を、SF的要素を絡めながら感情をリアルに描いていました。
舞台の手前と奥を仕切るように設置されたシンプルな舞台美術や効果的で、人物の配置や照明とうまく組み合わせて、次々と変わるシーンをスムーズに繋げていました。天井から吊り下げられた竹や日本庭園のような玉石の床などの和風な要素も意外に違和感がなく良い雰囲気を作っていたと思います。最後のシーンの美術もとても美しく、印象に残りました。
激しい言い争いになるシーンが何回かあるのですが、その中に差し挟まれる沈黙の時間が登場人物の心情を強く感じさせて素晴らしかったです。解決されないままの中途半端なエピソードもいくつかありましたが、物語の主軸がしっかりしているので、観ている間は気になりませんでした。悲しい結末ですが、清々しさを感じました。
このクオリティで2500円とは、コストパフォーマンスも素晴らしいと思います。当日パンフに挟まっている人物相関図はネタバレになるので先に見ない方が良いかもしれません。