奇跡のりんご 公演情報 劇団龍門「奇跡のりんご」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     グレイト! 華5つ☆。観ることができて本当に良かった。

    ネタバレBOX

     板上は平台をセンターに据えその上に場に応じた小道具をセット。上手下手にハの字型に側壁が置かれ各々樹木の枝のような文様や花のような文様をあしらってある。この“ノ”と“〵”頂点からセンターへ延びた衝立の奥が通路になっており衝立と衝立の間は開けてあるので通路を介して下手、上手、そしてセンターが出捌けに用いられる。袖は当然観客からは見えない通路が袖の役割を果たすと考えて良かろう。
     物語は、作者らの言によれば『ブレーキの壊れた観覧車のようなSFファンタジー』とのことであったが、自分には極めて深いメタファーを用いた傑作と感じられた。実際描かれている情況は2011.3.11 14時46分頃に発生した大地震とその後の大津波が曝け出した人災のあからさまな実態であった。あの辺りは海岸がリアス式の処が多い為陸地に津波が近づくにつれ津波の高度が高くなることは教科書で習ったから日本中の子供が知っていた。自分もその頃から知っていたと記憶する。にも拘わらず自民党政権時代に防波堤の高度不足が東電社内で問題化されていたにも関わらず対応が取られなかった結果、原子炉がメルトダウンを起し日本中がパニックに陥ったばかりではなく、経産省を始めとする官庁が嘘を交えた誇大宣伝を大々的に喧伝しマスゴミが推進派の戯言を無批判にメディアに載せることも多く、首相であった菅さんが視察に訪れた際には首相批判の記事が量産された。当時東電社長であった清水は「逃げていいですか?」と宣わっていたという。而も清水の嫁の父、勝俣恒久はこの人災の責任を逃れることばかり画策していたのではなかったか? 責任をキチンと果たして被ばくし亡くなった幹部は吉田所長だけではないのか? 長い裁判の結果、他の幹部は複数の副社長らも総て無罪! 最高裁裁判官の資質を疑う。人災後ほとぼりも冷めたと判断したのか? 自民・公明の与党+推進派及び官僚共は、愚か極まる原発再稼働路線を又も嘘と詭弁で推進している。
     ところで国とは何か? 社会で習ったから誰もが知っているハズだが一応上げておくと国家構成の3要件は、領土・国民・主権だ。
     領土は、国家が権限を及ぼす地域を指し、国民は、その領土に居住し、国家に属する者を指す。そして主権とは、国家が国内政治を自律的に決定し、他国から干渉を受けない権利を指す。これら3要素が揃うことで、一つの政治社会が「国家」として国際社会に認知される。ところで領土には陸地のみならず、領海や領空も含まれる。然し現在の日本は首都東京を含む地域一帯の上空空域、沖縄県を中心とする地域一帯の空域が外国イコールアメリカの管理下にある。また日本各地に存在する米軍基地は治外法権領域であるが沖縄に於いては日本国土の僅か0.6%しか占めない沖縄にその約70%が集中しレイプを始め数多くの凶悪犯罪が米国兵によって実行されてきたし、現在もニュースで報じられることは国民のよく知る処であるが、その処罰さえ日本の法で自由に裁くことができないのに国民の反発は異常に少ない。更に言えば毎年秋にアメリカから政府宛てに届く「年次改革要望書」によって日本の政治・経済政策が実施されてゆく。これは日本政府がアメリカの傀儡として機能していることを如実に表すものでしかないのは要望書の内容と日本を長く牛耳ってきた自民党の対応策を比べてみれば一目瞭然だ。これら総てを総合して日本が独立国等と言えると考える者があるとすればちょっと首を捻らざるを得まい。然し乍ら、これが現実である。F1人災を起した原発も輸出元のGEの技術者が国外に輸出するには余りにも危険だと抗議しアメリカ議会でも大問題になったことで知られた型式の原子炉であった。導入に積極的だったのは中曽根康弘及びCIAエージェントとしても著名であったポダムこと正力松太郎で正力は配下にあった読売新聞で原発を夢のエネルギーとして盛んに喧伝し、初代科学技術庁長官も務めた。関東大震災時の朝鮮人虐殺にも自らに一定の責任があったことを匂わせる発言を残している。更に若干。敗戦後の日本の歴史に極めて屈辱的且つ決定的に不利な重大協定を結んだ国賊・吉田茂についても一言記しておかねばなるまい。締結当時日米行政協定と呼ばれ現在は名を地位協定と改めたものの実質的内容は殆ど変わっていない協定で日本の空域改定や米兵の犯罪を日本の法でキチンと改定したり裁けないばかりか、米国人は国務である等の理由をつければ日本への入国・退出は完全に自由であり外務省等も実際アメリカ人が日本にどれだけ居るか把握できないのである。その方法は簡単、海外から米軍基地へ飛来し基地ゲートから日本の国土へ出るなり六本木迄ヘリで飛び街へ出るなりできるのだ。治外法権もいい処ではないか! かくの如く日本はアメリカの支配下にあり、その下で国民を騙しつつ、自らは王ででもあるかのような専横を恣にする下種政治屋が「国政」をかつてなき迄に骨抜きにし、無明の闇に沈めた。にも拘らずこんなあからさまな欺瞞と子供騙しの手口を見抜きキチンと批判することも真陸にできない国民とは何ぞや! である。
     このような国民がこぞってここぞとばかりにイビったのが、グローバリゼーションが官民共同で推進され、調子にのった者共が勝ち組、負け組と囃し立て自分達同様に愚かで卑怯極まる下種では無く、単にマイノリティーであったり、貧しい者であったり、異なる価値観で生きる人々であったのではないか? 今作に登場するのは所謂ダメオヤジの主人公であるが、自分は独りぼっちだ、と孤独感を募らせるセクシャルマイノリティーも登場し極めて大事な役を演じる。だが本当に彼は孤独か? そうではあるまい。真に孤独であれば、己を認識することさえできない。彼は孤独ではなく彼の実存が社会の「一般的常識」によって引き裂かれているのだ。即ちダーザインがヘテロ的在り様の「常識」によって引き裂かれているということだ。換言すれば自らの性認識と社会一般から見られる性認識が逆なのである。このギャップが彼を否応なく引き裂き苦しめているのである。ダメオヤジの他者を観る目に分け隔てのないこと、それが本物であることを知って初めて友を得、自らが生きていた証を託すことのできる者を信じることが初めてできたことに気付き、彼は安堵して自死による自由を行使し得たのである。哀しいことではあるが、これが彼にできた唯一の自己解放の道だったのだ。今作が描く地域は幾つかあるが彼が活躍していたのは新宿。若い頃、自分が入り浸っていた新宿である。自分が入り浸っていたのはゴールデン街で、当時トーシローは怖がって余り来なかった。そんなゴールデン街を縄張りにする猫たちは異様に太っていたのを思い出す。歩くのに腹が地面に触れるほどにも太っていたのである。何故かといえば、性的マイノリティーが働く店がかなりありそこで働く人々が野良猫を可愛がる余り餌を与えるのでこのようであったのである。彼らの寂しさ苦しさを分かっていただけようか? 
     今作の上手い処は他にも幾つもある。例えばダメオヤジを覚醒させ地球を救おうと図る神乃至その使いのあれやこれやの覚醒作戦に対し悪魔の誘惑が対峙し続けるのであるが、りんご(即ち知恵の実)を食べれば総てが叶うとの文言を実現させることは神或いはその使いの要請することも実現できるということを利用し、同時に善と悪はコインの裏表即ち表裏一体であることを用いて悪の論理を以て善を為すことを可能にしてしまうダメオヤジの快挙。この際、一人称が“僕”から“俺”に変わり悪魔が彼に恋をし子供迄為すことになったが、この一人称の変化によって表されている男らしさや力強さ、決断力の変化をさりげなく表現している点も見事である。また3.11人災によって行方不明となっていた氷川丸船長父子とその次女(家族は操業中に津波で死んだと考え孤児になったと考えて時にはウリをしつつ糊口を凌いできた)がダメオヤジの部屋に転がり込んで世話になっていた際空腹の余り牛丼を食べたいと願い、腹をすかせた彼女の為にダメオヤジが牛丼を買いに行った先で金が足りず、用意された牛丼をタダで貰うことになった時、この縁で父子が巡り合うことになったりもしてアンラッキーとしか言えない人々に僥倖が訪れた経緯も描かれていた。他にも幾つかの挿話がありつつ物語は展開したが、ラストは時が移り悪魔と元ダメオヤジの間にできた子の時代、AIの長足の進歩により人間はAIに支配されようとする時代になっており神乃至その使いたちから夫婦はミッションの実行を依頼される。然し悪魔と元ダメオヤジ夫婦の解答は「俺たちの子だ、何とかやってゆくだろう」である。見事!

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    2025/04/21 18:42

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