泡風呂で生まれなおす 公演情報 COLLOL「泡風呂で生まれなおす」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/03/20 (木) 15:00

     上演会場が小劇場やホール、公民館等でなく、Cafe MURI URIという、まぁ正確に言えば、Cafeというよりかは演劇やダンスや舞踏、展示会、シンガーソングライターによる弾き語りLIVE等に使われるイベントスペースだということを、Cafeの公式サイトを見て分かったが(なお、現在Cafeとしては営業していないということが公式サイトに書かれていた)、それにしてもCafeで公演するということだけでも気になる。その上、田口アヤコさんという役者による一人芝居であり、朗読劇であり、現代ダンスも多少取り入れており、観ていて、良い意味で演る作品の数も4作品とそんなに少なくなく、劇の内容も盛りだくさんで、観ていてお腹いっぱいになった。
     また、ドリンク代を払って、ドリンク片手に、気軽に鑑賞でき、Cafeがアパートの屋上に面している関係もあってか、窓から気持ちの良い陽光が差し込み、店内はあんまり無駄に電気を使っていない感じが、Cafeという空間を最大限に活かしていると感じ、自然さえも劇の背景に思えてきた。
     
     最初にCoRichに載っていた劇のイメージの写真とタイトルからは良い意味で、はっきり言ってどのような内容なのかが全く想像できなかったが、その現代アートのような写真や突飛なタイトルに惹かれて観にいったら、想像していた以上によく出来ていて、感心してしまった。

     
     私は、昼の回を観た。
     昼の回の前半の中編の劇川上弘美作『aer』では、出演しているのが役者の田口アヤコさんのみなことを逆に強みにした主人公の女性が赤裸々で欲望のままに生きていたところから、自分の子どもを身籠り、産みの苦しみ、息子が大きくなり、成長し、親離れしていき、段々息子が大きくなるにつれ、殺したい衝動が肥大化していき、苦しみ、いつの間にか自分が人並みに歳を取っていき、気付けば、息子も自分と似たような性癖を持ち、自分と同じような欠点を持ち、自分と同じように恋愛して結婚し、子どもが産まれ、気付くと歳を取っていくんだろうと考えると、その循環こそが、究極の復習になるのではないかといった風に考えるようになるまでを、時にに独白的、時に私小説的、時に詩的、時に哲学的、時に感情露わにして、主人公の女性の心情を描いたり、物語がどれくらい進行してるかを表現していて、これは田口アヤコさんの個性もあるのだろうが、内容的には多少のサスペンスやサイコホラーの要素さえあれど、幻想的だったり、ファンタジックな要素なんて微塵もないのに、その独特な動きや語り口から、不思議な話だと錯覚させられてしまうから見事なものだ。

     後半では、谷川俊太郎作の詩『ぼく』、短編劇田口アヤコ作『わたしが死んだら世界が終わる』、宮沢賢治作の詩『永訣の朝』を観た。
     2つの詩は、詩が描く人物描写や風景、世界観がありありと目に浮かんでくる朗読で、非常に良かった。
     短編劇田口アヤコ作『わたしが死んだら世界が終わる』は、タイトルだけ観ていると、村上春樹さんとかと似たような世界観と思いきや、蓋を開けてみると良い意味で裏切ってくれて、中味は、銀河鉄道の夜に出てくるジョバンニの母親とカンパネルラ亡き後のジョバンニのリアルで痛々しいその後を描いていて、『ドラえもん』におけるドラえもんが居なくなった後の、のび太とのび太ママ、ジャイアンとスネ夫、しずかちゃんと出来杉の中年になった姿を描くくらいに見てはいけないパンドラの箱を開けた感が否めなかったが、そのドキドキ冷や冷や感に引き込まれた。
     高齢なジョバンニママがコロナで亡くなり、自分が亡くなった後工場で夜勤で働く息子のジョバンニが上手くやっていけるかどうか等の不安や心配から暫くの間幽霊となって家に留まると言ったことなど、妙な現実と不思議さが日常の延長線上に描かれて、話が進んでいって、なかなか興味深かった。電気、ガス、水道代等が溜まっているなどリアル過ぎて怖いぐらいに、宮沢賢治作『銀河鉄道の夜』のその後を描いているとは思えないぐらい、ロマンもクソあったもんじゃない現実が突きつけられていて、感慨深かった。

     但し、前半、後半を通して、ほぼ笑える場面がなくて、極度に身体を張り詰めて、極度に集中して観ていたので、観終わった後、そんなに長時間じゃなかったはずだが、途中休憩もあったし、適度にドリンクも飲んでいたはずだが、気の張り詰め過ぎで大いに疲れた。
     

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    2025/03/21 02:07

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