血の婚礼 公演情報 劇団俳小「血の婚礼」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    作曲家の上田亨氏が下手で生演奏。フラメンコ・ギターの音色をキーボードで見事に鳴らす。驚いた。劇中の歌は印象的でいい出来。黒衣の女達がコロスとして詩を朗唱し合唱す。子守唄が余韻に。

    母親は早野ゆかりさん。息子である花婿は左京翔也氏。花嫁は小池のぞみさん。彼女の元彼レオナルドは加藤和将氏。彼の現在の妻は新上貴美さん。“月”は福島梓さん。“死”は大久保たかひろ氏。

    個人的に女中の西本さおりさんが大活躍のイメージ。実はレオナルドの妻が今作のキーだと思っているので新上貴美さんの薄幸そうな佇まいも好き。

    いろいろと工夫が見えて面白い『血の婚礼』。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    フェデリコ・ガルシーア・ロルカは同性愛者だったらしい。学生時代、サルバドール・ダリに熱烈に恋したそうだ。
    1928年、スペインはアンダルシア州アルメリア県で結婚式の日、新婦が別の男と逃げ出した。家の名誉の為に花婿の弟が追跡してその男を殺す。この事件は大々的に報じられ、当時は誰もが知るニュースだった。これを元に戯曲化したロルカ。観客は事件の記憶と共に観ただろう。だがロルカは観客の期待とは全く違う文脈でこれを語った。俳優座スタジオで『ベルナルダ・アルバの家』を観たばっかりなのでこの作品の捉え方が随分と変わった。歴史や伝統や土地や一族や誇りやら何やらその全てに支配され抑圧されてきた女の自由への衝動の話だ。花嫁はこのまま支配されて従順に生きるぐらいなら死にたかった。死への旅路にレオナルドを付き合わせた。「自分は死ぬから貴方は逃げて」と言うがレオナルドも全てを捨ててここまで来たのだ。もう何処にも逃げる先などない。そして全てが終わった後に花婿の母親のもとに殺されに行く花嫁。花嫁は自分の真意を伝える。母親もそんな戯言、理解などしたくもないがその気持ちは痛い程よく判ってしまう。何故なら自分もこの地で抑圧されてきた女の一人だから。社会的に禁止されている同性愛者だったロルカは自由への正直な欲望を描いた。喉から手が出る程欲しいものは自由だ。全ての人間は生まれた時から自由であり、それこそが生命の本質。支配や抑圧からの解放、それが人間の歴史。

    ただ演出が冗長に感じた。第一幕で必要なものは全てが滞りなく進んでいる空気感。別に何の問題もない婚礼の宴。高揚した新郎と幸福そうな新婦。だがふと新婦の姿が見えなくなる。何か用事でもあるのだろう。特に変な感じはなかった。一生に一度の大切なお祝いだ。何も心配することはない。そこで花嫁が元恋人と馬で逃げたとの報告。そんな馬鹿なことあるわけがない。きっと何かの間違いだ。有り得ない。不意に足元がグラグラし世界がガラスのように割れ砕け散る感覚。
    全体的にちょっと説明がしつこいのだろう。何度もレオナルドがじっと物言いたげに背後から見つめている。あちこちを女中が出たり入ったり。観客の気を物語の別の部分に逸らした方が効果的。歌もある。黒衣の女のコロスもある。“月”も“死”も語る。こういう話ですよ、と押し付け過ぎ。敢えて見せない見せ方もあった。花婿のぼんやりとした無表情だけで言葉に出来ないそれが伝えられたとも思う。

    小池のぞみさんは歯列矯正中。劇団を背負って立たねばならぬ女優、大変だろう。

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    2025/03/07 16:59

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