ズベズダ 公演情報 パラドックス定数「ズベズダ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第一部 1947〜1957

    第二次世界大戦の終結が見え始めた頃、連合国のアメリカとソビエト連邦はその後の世界情勢を見据える。この二つの大国の覇権争いになると。敗戦間近のナチス・ドイツは科学技術力が圧倒的に優れていた。この技術を自国のものとすべき、決して奴等に渡してはならない。
    1944年に世界初の弾道ミサイルを開発した天才、ヴェルナー・フォン・ブラウンはアメリカにスタッフ数百人と亡命する。
    一方、ソ連は研究者を家族込みで2万人拉致。ゼーリガー湖のゴロドムリャ島に監禁、その技術を徹底的に吐き出させた。

    主演のセルゲイ・コロリョフ役植村宏司氏が第一声から声が枯れていた。三部縦断上演、大丈夫なのか?と不安が走る。だが何とか持ち直し最後には気にならなくなる。物凄い台詞の量、化け物に見えた。短髪の亜麻色の髪、遠目だと魔裟斗っぽい。少年時代からの空への夢、グライダー、航空機、更に宙へと。宇宙にまで人間は飛んで行ける。あらゆる困難を乗り越え、コロリョフは敵国に向けたロケット(ミサイル)の目的地を月面へと変えていった。国威発揚の名のもとに。

    第一部のもう一人の主人公、アルベルト・レーザ(大柿友哉〈ゆうや〉氏)。後にソ連に帰化したナチス・ドイツの工学者。戦争協力なんかの為ではなく、セルゲイ・コロリョフの夢に賭けた。月に人は立つのだ。それは決して不可能なことではない。人間の叡智は更に進化していく。必ず成し遂げる。限りなく頭脳をフル回転させてそこにまで辿り着く。人間は生きながら進化できる稀有な生物だ。必ず行くのだ。

    コロリョフと複雑な関係にあるエンジン設計士ヴァレンティン・グルシュコ(神農〈かみの〉直隆氏)、ロケットエンジン開発の要。1933年ジェット研究所で出会ったコロリョフとグルシュコは互いの才能を認め合った。だがスターリンの大粛清が始まり、密告が奨励される世の中に。1938年、グルシュコは反体制派の嫌疑で投獄、禁錮8年の刑。苦境に立たされた彼は司法取引に騙され、無実の同僚コロリョフを反体制派として告発してしまう。冤罪のコロリョフはシベリアの強制収容所コリマ金鉱山に送られ10年の刑。栄養失調からの壊血病で全ての歯が抜け落ち心臓病を患う。この地に送られて死んだ者は100万人を超えた。コロリョフの罪が免除されたのは1944年。後に自分を陥れた者がグルシュコであることを知る。当時の政治情勢として仕方ない事とはいえ、ずっと心の底に残るわだかまり。互いの能力を認めつつ、複雑な感情の人間関係は一生続いた。

    岡本篤氏、前園あかりさん、松本寛子さん、3人組のキャラ立てが巧い。少ない人数で大河ドラマを綴るにはキャラとエピソードの凝縮と選別が要。

    MVPはフルシチョフ第一書記役の今里真氏と国防工業大臣ドミトリー・ウスチノフ役の谷仲恵輔氏。JACROWを観ているような手慣れた手腕の政治劇。この二人のハイテンションで客席がパッと明るくなる。成田三樹夫や小池朝雄、遠藤辰雄の風格。出て来るだけで盛り上がる。

    驚くのはこんなガチガチの理系話に詰め掛けた女性客の多さ。野木萌葱さんの信望か?
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    劇中には登場しない二人の天才。

    ヴェルナー・フォン・ブラウン。ナチス・ドイツのV2ロケットを開発し英国中を恐怖に陥れた。最大射程距離は320km、マッハ4で飛ぶ1tの爆薬を積んだミサイル。アメリカに亡命後は宇宙開発の責任者となり、「米宇宙開発の父」と呼ばれる。アポロ計画を立ち上げ、有人月面着陸を成功させた。

    コンスタンチン・ツィオルコフスキー。19世紀のロシア帝国で「ツィオルコフスキーの公式」を発表し、ロケットで宇宙に行くことが可能であることを証明した。「宇宙旅行の父」と呼ばれセルゲイ・コロリョフに多大な影響を及ぼす。世界初の人工衛星「スプートニク(付随するもの)1号」はツィオルコフスキー生誕100年に合わせて打ち上げられた。

    多分、アルベルト・レーザは複数の人間を組み合わせた架空のキャラクターだろう。ルカーシャ、サーシャ、レーリャも多分そうではないか。

    マニアックな米ソ宇宙開発競争を叙事的に綴る。ディレクターズ・カット最長版の趣き。
    話自体は暗く淡々としていて余り盛り上がらない。来たる“物語”への「序章」として静けさを積み上げていく。

    1957年10月4日、ソ連は世界初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功。0.3秒ごとに発信される信号音は世界中で受信され「スプートニク・ショック」と呼ばれた。世界で最も優れた国家はソビエト連邦であることの宣言。休憩中もずっと鳴り続けるシグナルの余韻。

    0

    2025/02/26 15:20

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大