実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/02/24 (月) 13:00
日本で一番上演されている戯曲とのことだけど、観劇歴 10年で初めて拝見した。 1977年に書かれた戯曲とのことで俳優ではなく女優。後でわかる女優AとB 2人の在り様。勘の良い人なら最初に判っただろうけど判ったのは最後だった。
4人の女性の俳優が女優A/B/C/Dを演じる。長く女優を見てきた清水邦夫が書いた女優の話なのだけど、4人はどんな気持ちで演じておられるのだろう。女優、『かもめ』のニーナも女優としての在り様に悩む役柄だ。
伊東沙保さん、キキ花香さん、日下七海さん、西山真来さん、4人それぞれの俳優のしての味が見えてそれが良い。チェイホフ、シェイクスピアの戯曲が登場する。10年演劇を観て来ていて判るのだけど三好十郎の『斬られの仙太』は知らない。三好十郎は築地小劇場で公演されていた頃の劇作家。女優Aの時代が判る様になっている訳だ。
開場すると俳優 4人が楽屋になっている舞台美術の鏡や手鏡で化粧をしたり、衣装を整えていて、 視線を客席にも向ける。劇中でもそうだった。これは終盤客席の灯りをいったん明るくすることと同じく、観客も亡霊に仕立て楽屋に一緒に居る心持ちにする試みなのだろうか? ここに居ない人達である女優A、B、Dは黒い衣装でアトリエ春風舎の黒い壁に溶け込む。一人白を纏い現世に居る女優Cは反対に疎外されている様だ。 伊東沙保、キキ花香、日下七海、西山真来がそれぞれ異なる演技体。そしてそれが良い。 最後のシーンはプーシキンの小詩からの引用の 華やかな都(まち) 貧しい都 囚われの心 ペテルブルグの街の「舞台と楽屋」の2面性か、その楽屋なんだな。そして囚われる心、なるほど楽屋に留まる 3人の心たちか。 その前の最後間際の三人姉妹の台詞「それがわかったらねえ、それがわかったら......」を伊東沙保さんが口にされ、 西山真来さんがこの詩を引用した台詞を話す。最後のシーン、出番が出来た女優達の見せ場だ。
伊東沙保さんの「斬られの仙太」の件での渡世人口調が大好物だった。あの件も面白い。そして日下七海さんの眼で語る演技たち、そして鏡前でのニーナが素晴らしい。最後に楽屋に残ったあの 3人での三人姉妹を観てみたい。