実演鑑賞
満足度★★★★
凄く面白い。
古代ギリシアの英雄、オデュッセウス(リー・スイキョン氏)は小さな島国イタケーの王。トロイア戦争で活躍したものの帰還せず、亡くなったと思われていた。その妻である王妃ペネロペ(森ようこさん)は絶世の美女で、各国の王子が求婚者として王宮に住み着いて帰らない。3年もの間、肉を喰らい酒を飲み女官を抱いて王宮を荒らしオデュッセウスの財産を食い潰していた。それにうんざりした王子テレマコス(アドラン・サイリン氏)は父親を捜す旅に出る。
空間演出家・小池博史氏は多民族国家のマレーシアに注目して国際共同制作を。異なる文化の融合と調和こそが今後の世界の鍵となる、と。飛び交う英語日本語北京語広東語マレー語(イタリア語やスペイン語のような言葉も聴こえたような)。古代ギリシア劇、京劇、能楽、イタリアの道化師幕間コント、日本舞踊、ロックにラップに歌謡曲・・・。ミクスチャーの塊だがそこに一貫して観客を退屈させない姿勢が見える。多言語でも奥のスクリーン上部に字幕が映し出されるのが親切。可動式の小さい幕に役者がハンディカムで撮影したものをリアルタイムで映し出す演出も。役者と映像を共演させたりもする。(森ようこさんまで撮影に回る場面も!)
ステージ上手に片開き戸になった壁掛け、ざっと60以上の扇風機とサーキュレーターが据え付けられている。それが開くと海上の暴風となりド迫力。
客席最前列下手でサントシュ・ロガンドラン氏が鳴り物を叩き、上手の太田豊氏がサックスやエレキギターを生演奏。
役者陣は白塗りに思い思いの奇妙なメイク。コンテンポラリー・ダンスのような踊り。『マハーバーラタ』を思わせる多種多様な民族衣装。
主演のリー・スイキョン氏は劇画調の顔でカッコイイ。
美貌の王妃、森ようこさんは凄まじかった。岩下志麻系の正統派美女なのに魂がPUNKなのだろう。ファンなら必見。
王子、アドラン・サイリン氏は万有引力っぽい。
陽気なティン・ラマン氏とヒールのセン・スーミン氏は観客を下ネタで盛り上げる。
海神ポセイドーン、今井尋也氏の唸りは本物。
一つ目巨人ポリュペーモス(セン・スーミン氏)のエピソードは愉快。
魔女キルケ、西川壱弥さんはエロい。
女神カリュプソー、津山舞花さんのかかと落とし。
冥界のシーンは幻想的で美しい。鏡とビデオカメラを使い能面の死者達と不思議な踊りでの邂逅。死の無常感に感じ入るオデュッセウス。選曲もセンス良い。
クリストファー・ノーラン監督の次作もマット・デイモン主演の『オデュッセイア』。2800年前にホメーロスが生み出した苦難の旅が今世界に求められている。憎悪の連鎖、欲望の果て、死人の山。現在と何も変わらない人間の業。世界語で綴られる『オデュッセイア』。
是非観に行って頂きたい。