実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/02/17 (月) 13:30
座席1階
民藝が20余年を超えて再演した舞台。元々は1980年に書かれた作品だったという。前回は奈良岡朋子が演じた姉リビーの役を、樫山文枝が演じた。
舞台は米国のリゾート地の別荘で、毎年姉妹が夏を過ごす。ここでは鯨が姿を見せるという楽しみもあった。姉リビーは視力が低下し、日色ともゑ演じる妹サラの手を借りないと生活できない状況。サラは献身的にサポートしているが、妹に対する複雑な思いもあってますます気むずかしくなっている。
姉を施設に預けて自分の人生を生きてはどうか、という幼なじみの女性の提案や、ロシアの亡命貴族と微妙な心の交流を交わすなど、サラの胸の内にさざ波が立つ。
こうした微妙な波風を、とても丁寧に描いている。さして大きな出来事が起きるわけではないが、第2次大戦が終わって平和が訪れたひとときだからこそか、とても温かな空気が流れているのが心地よい。
民藝を引っ張る役割となった日色が長ぜりふをきっちりこなしているところに、ほかのベテラン俳優ではとても追いつけないように思える安定感がある。台本でチェックしなければならないかもしれないが、日色のせりふにほかの俳優のせりふがかぶってしまう場面が複数あったが、日色のミスではないと思う。そのほかにも、声の通りやしぐさなど、リスペクトしたい俳優の姿だ。
もう1人、亡命貴族役を演じた篠田三郎はすばらしかった。存在感は絶大で、同性から見てもほれぼれするようなかっこよさがあった。
民藝の名作の引き継ぎというような感じの再演だったが、仮にまた、20年後に再演されるとしたら、どんな舞台になるのだろうか。