実演鑑賞
満足度★★★★★
初日~3日間5ステージを潰し、漸く開始したという。日時を振替えて拝見できた。
先日観たばかりの「映像都市」も「映画撮影所が舞台」の鄭義信作品。本作は満映(満州映画協会)が舞台という事で、以前松竹だったかの「さらば八月の大地」の変奏か、と見始めたが、恐らく同じ作品か、ベースにはなっている(途中撮影所の裏だかのベンチのある場所に既視感あり。そこで初めて主役をやる女と、恋仲らしい中国人スタッフが淋しい会話を交す)。だが見ながら思い出したのは椿組で9年前に花園神社でやったもう一つの「撮影所が舞台」の鄭作品「贋作幕末太陽傳」(戦後日本が舞台)の方が芝居のトーンは近かった。
本作、鄭流の小ネタの数々もあるが見事に嵌まり、敵対国に帰属する者同士の間に生まれた友情や、刹那の時空(満州自体がそれ)に身悶えしながら生んだ情愛が、歴史とシンクロして次第に緩い結び目が強固に締まるように形成されていく。
芝居の時間の中で、ともすれば笑いが上回って滑り落ちがちな事もある鄭作品が、今作では紐がすり抜ける事なく結び目となり、大地の上の楼閣が真実に思われたのである。
如何にもな、あざとい芝居くさい仕草も総動員したそれらがことごとく決まっていた。この感覚はかなり昔、本当に拙い若者らによる短い芝居に感じた事がある。胸がざわっと波立ち、なんでこんな芝居に?と自問しながら感動している自分がいた。あれって何だろう・・「これが感動って言うのだよ」AIが感情を学ぶ瞬間のベタな台詞が適合する。