時代絵巻AsH 其ノ拾八『蒼穹~そうきゅう~』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 其ノ拾八『蒼穹~そうきゅう~』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    歴史における虚実の狭間、その埋もれた思いを巧みに掘り起こし演劇(舞台)という世界の中で紡いでいく。毎公演、販売するような豪華なパンフレットを配付してくれるが、その中に時代背景や史実そして相関図等が記されており、上演前にざっと読んでおくと更に分かり易い。勿論、公演を観るだけでも その面白さは分かる。

    時代絵巻 AsHの公演は、脚本(物語)の面白さは言うまでもなく、音響・音楽、照明といった舞台技術が効果的・印象的なのが特長だろう。また本公演は、殺陣シーンの荒々しさ 躍動感の中に生き様のようなものが感じられた。美学とは また違った生命力のような荘厳さであろうか。

    物語は奈良時代末期から平安時代にかけて、東北に住まう蝦夷たちの物語。その中心は、東北(日高見国)の阿弖流為と大和朝廷側の坂上田村麻呂の二人、その夫々の立場の違い 生き様そして苦悩を切々と紡ぐ。子役を使った出会いと邂逅が切ない。
    (上演時間2時間20分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、いつもの時代絵巻 AsH公演のような段差を設えているが、上手/下手に異なった造作、それが いつもに増して躍動感を感じさせる。上手に物見柵、下手に岩洞窟のようなもの。また中央は開き襖ではなく、御簾(みす)を用いており、それらしい情景が浮かび上がる。勿論 衣裳も朝廷側と蝦夷民ではまったく違ったものを着ている。

    物語は、阿久路(アクロ)こと後の阿弖流為と呼ばれた男と後の坂上田村麻呂(幼少期)が出会ったところから始まる。この2人、結果的には戦うことになるが、何とか共存共栄出来ないか模索する。その苦悩の過程を 夫々の立場と境遇を相互に描くことにより、時代状況を浮き彫りにしていく。さらに帝(天皇家)や公家(藤原氏)といった大和朝廷側の複雑な思惑も絡めて興味を惹かせる。時代と人物の背景を複雑/重層的な観せ方によって、資料が少ないこの時代の出来事を舞台というフィクションとして巧みに描く。

    見所は2つ。まず 主人公的な2人の心情を丁寧に描き、その思いとは裏腹に時代状況がそれを許さない といった抗えない運命が観る者の心を打つ。次に その物悲しい思いを抱きながら戦う、その殺陣シーンが見事。田村麻呂率いる朝廷と阿弖流為率いる日高見国の衣裳から、何となく権力対反権力 1960~70年代の学生運動を連想した。この権力は帝の新羅系か百済系、さらに藤原氏という同族内の権力抗争という、国家的・個人的といった広がりを持たせ、物語に深みをもたらす。

    舞台美術、その音響・音楽、そして照明効果が素晴らしい。音響音楽は殺陣シーンを中心に流れ、その勇ましく鼓舞するような音。それは会話の場面では抑えられ、しっかり台詞を聞かせる。一方、照明は会話の場面や人物が立ち去った無人の光景に照らす。その無の空間に余韻と印象付けするような上手さ。さらに本公演では、日高見国の衣裳やメイクに個性を表し、ビジュアル的に観(魅)せるを意識している。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/02/08 02:22

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