藤戸 公演情報 劇団演奏舞台「藤戸」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     team奏を拝見。圧巻、ベシミル!! 凄い迫力、脚本の態と少し飛躍して演者たちの想像力を刺激する方法や、それに応えて為される役者陣の力、舞台美術にマッピングされるイマージュの美しさ及び的確さとこれまた見事に呼応する生演奏。華5つ☆ 追記2.19

    ネタバレBOX

     物語は平安末期源平合戦の最中、主人公・佐々木三郎盛綱が現在は埋め立てられ消失したが岡山県倉敷に在った『藤戸海峡』を馬に乗ったまま渡り先陣を切って武勲を立て児島の領主となった際、何故海上合戦を得意とした平家に対し挙げたような戦法を採って先陣を切ることができたのか? この時点で船を持たなかったと伝えられる源氏がこの合戦に勝利し得た根本的理由即ち騎馬で海を渡るということが何故可能だったか? 
     板上、展開としてはこの合戦で盲いたものの新領主となった佐々木着任の模様から描かれる。能の方は拝見しておらず、その脚本も読んでいないので形式・内容を知らないが、一般論で言うなら複式夢幻能の常として前場と後場に分かれているのだろう。今作の肝は、前場のシテ役、老婆が上段で挙げた疑問の理由を告げ、その理由故に殺され子を失った母の慟哭を切々と訴える。新領主盛綱は船で着任時信頼する従者から領地の民が集まっていることを告げられ、その理由を訊ねる。従者は新領主佐々木の新たな布告即ち‟新たな掟を知る為“、また新領主を拝する為に集まったのだと答える。そこで盛綱は民の面前で新領主としての布告をする。「最大の罪は殺人である。その他、人としてあるまじき行いに対しては厳正に対処する」という極めて倫理的に真っ当な布告をした。
     民らが引き上げると従者は献上された島で最も熟成された酒で領主をねぎらうが、盛綱は浮かぬ風情。暫く後、一人の老婆が現れる。これに応じた盛綱は、図らずも村で狂人とされる老婆が一人息子の惨殺の有様を事実通りに語る相手となった。結果、己の為した所業と着任時に行った布告の矛盾が齎す匕首を自らの魂に突きつけられることとなった盛綱には、騎乗のまま海を渡り先陣を切ることができた理由、更に他の源氏武者に情報が漏れ手柄を横取りされることを恐れた盛綱自身が浅瀬を案内した息子を惨殺したことも、ありありと再現される。結果懊悩が彼を迷妄・幻影の時空に導いた。
     後場で老婆の語る話は息子は鮫に食われたという村人たちの話を踏襲する嘘に変じている。代わりに怨霊の真打として惨殺された息子自身の幽霊が登場、生きている限り盛綱に取り憑き苛む。即ち苛む者が前場と後場では異なるのである。ひょっとするとこの部分が能と現代劇として演じられた今作の大きな違い、演奏舞台の脚本家が最も工夫した点なのではあるまいか?
    ところで今作を観る者にひしひしと迫る迫力は、盛綱の狂乱のシーンが恰も「東海道四谷怪談」に登場する元赤穂藩藩士・民谷 伊右衛門が妻・岩を惨殺後化けて出られ狂乱を呈するに至った場面を彷彿とさせるし、任地到着直後に行った布告に真っ向から対立する矛盾を突きつけた老婆の真実に己の領主としての存在意義及び人間性の総てを打ち砕かれ裸形を突きつけられて苦悩する盛綱の姿が映し出される。この場面の持つリアリティーは「マクベス」一幕五場でマクベス夫人が王の使者からマクベスの居城に王が宿泊するとの知らせを告げられたあとの台詞。殊に・・・死をたくらむ思いにつきそう悪魔たち、この私を女でなくしておくれ(小田島雄二訳)云々以下の決意表明を想起させることで「マクベス」という作品そのものをも今作観劇中に同時に観る者の想念に嵌入させた。
    無論、老婆の最初の登場は前シテとして二度目の登場は後シテの先触れとして機能しており、自分の想像では能でもこのような前シテと後シテの違いはあるかも知れないとは考えるが無いと考える方が今作の脚本が如何に練られたのかを考える上では面白い。
     作品の三大要素は世間体を意識した従者の冷静な対応(世間)と盛綱の狂乱が見事に対比される点。その原因となる異界の者(惨殺された息子の幽霊)と仲立ちをしたその母の念(情念の凄まじいエネルギー)が三つ巴の展開をダイナミックに遂げることだ。が、その各々を舞台上で表現してみせた役者陣の力量が素晴らしい。殊に従者役・鈴木浩二さん、盛綱役・森田隆義さんお二人の演技は格段であった。無論、あやかしである念の権化・老婆を演じた岸聡子さん、息子の幽霊を演じた典多磨さんのアモルフな感じもグー。

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    2025/02/02 14:33

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  • 制作部、皆さま
    追記が大変遅くなり申し訳ありません。
    アップしましたのでご笑覧下さい。
                 ハンダラ 拝

    2025/02/19 02:59

    ハンダラ様
    いつもご来場いただきありがとうございます。
    また、今回も嬉しいコメントをありがとうございます。今後も邁進してまいります。
    またのご来場を心よりお待ち申し上げております。
    劇団演奏舞台一同

    2025/02/10 12:39

    皆さま
    追記はなるべく早くアップします。
    良い舞台を有難うございます。
             ハンダラ 拝

    2025/02/02 14:35

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