音楽劇 詩人の恋 公演情報 加藤健一事務所「音楽劇 詩人の恋」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/01/23 (木) 14:00

    座席1階

    この演目には、見どころがたくさんある。まず、加藤健一と加藤義宗の親子俳優のピアノ演奏の実力、歌唱。さらにはこの2人芝居で、息子の俳優としての力を父が認めざるを得ない、世代交代の糸口を漂わせるような印象深い場面があることだ。

    音楽劇と銘打ってあり、舞台の中央右にはグランドピアノがある。ここは、劇が進むとわかるのだが回転する舞台になっていて、途中で役者の胸の内を表現するすばらしいシーンを演出する。舞台はオーストリア・ウイーン。父の加藤健一は音楽の教授、息子はアメリカ人のピアニストで、壁にぶち当たっているときに声楽家の教授のレッスンを受けに来たという設定だ。
    冒頭、この2人がぶつかりあうシーンがおもしろい。荒れる青年を老獪な教授がやや下品なジョークでいなしていくというところが、いつものカトケン事務所の笑いをとる。だが大きく笑えるのは、今回はそれほど多いわけでない。あくまでもフォーカスすべきは、ピアニストなのに歌のレッスンとは、と反発していた青年が、教授と次第に心を通わせるようになっていくという点と、2人の秘められた背景だ。
    2人が見せるピアノの腕はすごい。多少の素養があったとしても、本業である普段の俳優業とは直接関係ないのだから、すごいと言っていいと思う。コンサートも開いている父の加藤健一は音楽劇と言っても違和感はないが、息子の義宗は「楽譜の読み方も分からなかった」という状況だったそうだ。3年前に「この演目をやりたいが、とりあえず1年レッスンを受けてできそうだったらやる」と父に言われ、ピアノ演奏も、歌唱も、大変な思いをしたのだという。専門の指導者が付いて1年やっただけで(しかも、俳優業をこなしながら)これだけの腕前になるなんて、やっぱりこの親子、すごいと思う。

    そして、俳優としての成長ぶり。「世代交代」という言葉を使ったのは、ソファにもたれ込む老教授と、舞台で躍動する青年・義宗との対比を見てのことだ。もちろん、世代交代というには早すぎるし、世代交代と言うほど親子の実力は近接していないとは思うが、思わずそんなことを強く印象づけられる2人芝居であった。

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