自慢の息子 公演情報 サンプル「自慢の息子」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「私たち」の喪失
    何を書いても「ネタバレ」と言われてしまいそうなので、感想は「ネタバレ」に記載します。…、自分のいまの状況に、ストレートで投げ込まれた球でした!…そういう個人的なバイアスがかかりつつ・・・ラストシーンにしばし鳥肌。

    ネタバレBOX

    ラストシーンに鳥肌。

    裸で立ちつくす国王、ナイフを握りしめる王妃、風を眺める聖母、やっと手に入れた幻想の幸福に浸るヒーローとヒロイン。そんなバラバラの人たちが、なんだかよく分からない布に絡みとられて、ひとつの王国を構成してしまう。

    私たちのガイドは、この王国が「どこにでもある物語」を持っていると解説してみせる。それが、歴史であると。これが「国家」なのだと。それぞれの事情と妄想が独立して紡ぎだした物語など無視して。現代の人間が作り出す共同体というのは、こういうものなのだと。

    この作品は、芸術的というよりも哲学的だ。現代においては「私たち」という言葉がもはや意味を失いつつあること、もしその言葉が成立するならば、それは共通の物語ではなく、たった一枚の絡みつく布切れのような何かによってであること。そんなことを、この作品は頭からではなく体で感じさせてくれた。時に、官能的に、下半身にも作用させて。

    (それにしても、同時上演中の『聖地』との極度のシンクロ度合い(布・ヘリコプターなど)は、戦略なのだろうか?もし、これが蜷川演出と松井本人演出の偶然なる邂逅であるなら、それは、まさに奇跡というべきものだという気もするが・・・)

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    2010/09/21 09:51

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