みえないもの(アーカイブ配信予約受付中) 公演情報 アンティークス「みえないもの(アーカイブ配信予約受付中)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    ㊗20周年公演。面白い、お薦め。
    いくつかの小さな物語を意味深に描き、それらを大きく包み込むように紡いだ公演。アンティ-クスらしく丁寧に 優しく考えさせるような内容だ。現実と幻想、そして過去や現在の話を縦横無尽に綴り込み、重層的に描き出す。
    この不思議な世界観、それが何なのか最後に明らかになる。演劇としては典型的な展開だが、何となく清々しく充実感を覚える。全体的に見守り 寄り添う、そんな包容力を感じさせる珠玉作。

    当日パンフにテーマらしきこと、「あなたの大切な『存在』に捧げます」とある。つまり「生きる」「生かされている」ということではないか。たとえ亡くなっても、その人のことを忘れなければ、残された人々の心の中で生き続ける。タイトル「みえないもの」は人の<思い>であり<想い>、その感性のようなもの。言葉では言い表せないこと、それを演劇という虚構の中でリアルに表現して伝える。

    少しネタバレするが、いくつかの話は日常、そして戦争や災害といった広がりがあるもの。しかし、それぞれの話を深追いせず点描することで「存在」というテーマを暈けさず 捉えて離さない。勿論、役者の演技力は確かで、物語を支える舞台美術や音響・音楽そして照明などは巧い。観応え十分。
    (上演時間2時間5分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、暗幕で囲い 中央に段差がある平台、上手/下手にも同じ高さの平台(大きさ や 形は違う)があり、中央の平台と行き来できる近さ。上手と下手に飾り棚があるが、形状は違う。ミニテーブルや丸椅子がいくつか。そして天井には網が吊るされている。全体は抽象的だが、いくつかの話を紡ぐため、夫々のイメージを固定させない作りが巧い。逆に 役者が演技で状況や情景を作り出す。なお 平台の天板部分が白、暗幕との関係で照明の照射角度によって鯨幕のよう。

    冒頭は少女二人(みく と さな)が、ぬいぐるみを使って無邪気に遊んでいる。物語は入院している病室、たみこ ばあちゃんの(唐沢)家、宇宙からの訪問者、そして高校時代といった、脈絡があるのか否か判然としない話が交錯して展開していく。さらに高校時代の話は大人になってからも回想的に描かれ、空間と時代が重層的な広がりと厚みを増していく。「ちぎり絵」といった台詞から色々なシーンの重なりが物語を構成していることを示唆。

    高校時代の虐め、最近は頻繁に報道され 問題の深刻さを伝えているが…。中学時代に虐められていた生徒が、高校へ入ってから虐められない防衛策として虐め側へ。そこには仲間外れになることが怖いという意識がある。そして大人になって後悔する、その負の連鎖が断ち切れない。

    たみこの家では懐かしい光景、ばあちゃん・じいちゃん・養女とその幼馴染が仄々と暮らしている。両親ではなく祖父母、そして実子ではなく養女というところが妙。日本の原風景、そんな懐かしさの中に奇妙な家族関係を描いている。また訪問者たちは、宇宙からやってきた家族、こちらは両親と長男・長女・次女という構成である。
    何となく平穏に暮らしていた家族、そこに突然の不幸が襲う。それが東日本大震災(災害)や太平洋戦争(戦災)を連想させる。そして引き取られた先、学生時代、そして病院のベットの上という繋がりが解る。

    ラスト、昏睡状態から数十年ぶりに意識が戻る。その眠っていた間にみた話、そんな夢オチの物語。此岸と彼岸の狭間、よく聞く走馬灯のような想いを情感豊かに描いた作品。幸せの日々は失って、そして大切な人は喪って初めて気づく悲しさ 寂しさ。当たり前のようにあった日々や人たちの存在、そして自分も含めて皆かぎりなく愛しいのである。冒頭の さな、そして訪問者の次女(星那<さな>)は、みく の生まれてこれなかった妹である(母が妊娠中に被災したため)。

    舞台技術…照明は真上から青白いビーム光線によって海中を、白銀(モノクローム)は過去・動かない世界を表現しているよう。音響は波音や鳥の鳴き声、音楽は優しいピアノの音色が印象的だ。状況(場面)に応じて衣裳を変えるなど、分かり易さに工夫を凝らしている。物語を印象的に そして余韻あるものに仕上げていることに好感。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/12/06 07:31

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