青春にはまだはやい 公演情報 プテラノドン「青春にはまだはやい」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    参った。今年はこの作家(笠浦静花さん)の年なのか。凄い脚本をごく当たり前のように仕上げてみせる。これが才能という奴か。多分このまま天下を取るだろうけれど、実はそんなもの何の興味も持たず更なる高みへと突き抜けそう。まだ誰も想像も及ばない新しい価値観の創造まで。ひれ伏す。
    当日券もありそうなので行ける人は何とか行った方がいい。前売り4800円、高えなと思っていたが観終わると全然安い。アガリスクエンターテイメント系が好きな人には御馳走。とにかく脚本の組み立て方に感心、物語の構想に打ちのめされた。

    大林宣彦 meets デスゲーム。過去のやり直しに取り憑かれた時間旅行SFの数々の名作を想起。藤子・F・不二雄風味でもある。キャスティングだけで既に勝利は決まっている。まさにタイトル通りの作品、ズバリと決めた。

    NHK杯全国高校放送コンテスト、通称Nコン。1954年(昭和29年)にスタートしたものでアナウンサーを夢見る全国の放送部高校生達の甲子園的存在。2020年の第67回大会だけがコロナで中止になった。今作の主人公(桜木紗瑛さん)はまさにその夢を破られたコロナ直撃世代。謳歌する筈だった青春時代をずっと引きずって生きてきた。鬱屈し高校を中退して引きこもりニート。かつて民宿をやっていた田舎の婆ちゃん家に転がり込んだものの二十歳になって頼りの婆ちゃんも亡くなってしまう。誰もいないガランとした古い建物で自殺を思い詰める主人公。そこに天井から落ちてきた一冊の古ぼけたノート。表紙に「願いが叶うノート」と記されている。かつてこの民宿で定期的に行われていた全国の放送部合宿のものらしい。歴代それぞれの彼等の夢。希望に満ち溢れ夢を真っ直ぐに見つめる彼等の澄んだ言葉に憎悪をたぎらせた主人公は最後のページに呪詛を書き殴る。すると・・・!?

    ネタバレBOX

    冒頭、キャスティング頼みのネタにも思えたが全然違っていた。所謂『バトル・ロワイアル』『人狼ゲーム』のデスゲーム系のオープニングで全く別の着地点へと観客をいざなう。

    作家は告げる。「“青春”とはその時感じる充実感などではなく、ずっと後になって振り返った時に沁みる感慨のことだ」と。

    菅沼岳氏の小島よしおは面白い。確かにキチガイにしか見えない。
    加納遥陽(はるひ)さんは平体まひろさん似。
    志賀耕太郎氏は肺気胸の為、初日から3日4公演を宮地洸成(みやちひろなり)氏が代役。4日目から復帰。自分は復帰して2公演目を観劇したのだがメチャクチャ面白かった。笑い上戸でずっと妙にイヒイヒ笑いをこらえている。
    渡邊りょう氏も最高。癖で髪の毛をすぐ弄る。
    柿丸美智恵さん、瓜生和成氏の高校生は卑怯にも程がある。そりゃ笑うだろ。
    水野小論さんのキャラもずば抜けている。一番観客の爆笑をかっさらった。もう何をすれば面白いのかDNAレヴェルで感知しているのだろう。全ての計算が正解。

    自分の好み的には全共闘世代とかガチガチのアカとか政治ネタのキャラも欲しかった。(違う方向性の笑いだが)。

    そして大内彩加(さいか)さん、ずっと気になっていたがこういう女優だったのか。性格女優でキツ目のキャラが行けそう。放送部滑舌ネタはキャラ的に噛む訳にいかないシーンなので見事だった。
    2024年11月27日、谷賢一を訴えた裁判が裁定和解として終結。性犯罪の被害者として「勝利的和解」だと受け止めるとコメント。ただ「和解は仲直りではありません」。ハラスメントカウンセラーの資格を取った彼女は、演劇界に泣き寝入りの被害者を今後出さないよう発信していく、と。興味ある方は「大内彩加の雑記置き場」を検索して頂きたい。

    0

    2024/11/30 16:53

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大