天井天下異聞奇譚 公演情報 吉野翼企画「天井天下異聞奇譚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    客入れに二條正士氏!豪華だ。紫テントは凄く快適で観易かった。テント芝居は腰の痛みで途中から帰ることしか考えられなくなるので足が遠のいてしまったが、これならまた行ける。

    『AGAIN〈オール・ザッツ・ニッカツ・シネマ〉』を思わせる。これは日活のアクション映画の総集編、名場面集なのだが、年老いた殺し屋宍戸錠がかつての日活アクション映画の中を彷徨い歩くもの。
    アングラ芝居を観に客席に座って開演を待っていた男(吉原シュートさん)。そこに現れた男(高田那由他氏)がその席は俺のだと因縁をつけてくる。御存知寺山修司の『観客席』から開幕。いろんな客席に潜んでいた役者達が吉原さんを舞台の上に引きずり上げる。「やめてくれ!僕はこの劇を観に来ただけなんだ!」『青ひげ公の城』のように虚構世界に投げ込まれた主人公の地獄巡り。昔スタンリー・キューブリックの映画を中原昌也が「時空間を超えて各世界の主人公がただ悲惨な目に遭う映画」と評した。同じく今作もアングラ演劇の虚構空間で訳の解らない散々な目に遭う一観客の悲劇。寺山修司、岸田理生、高取英、昭和精吾。観るだけでもキツイのにこれを演らされるなんて・・・。

    舞台上を歩いていたら『糸地獄』の冒頭シーン。吉原さんに台詞が投げ掛けられていく。おどおどまごまご。袖から本来の主人公・小寺絢(あや)さんが飛び蹴りして吹っ飛ばす。「これは私の役だよ!」
    『吸血鬼』毒子役の藤田怜さんが目を引く美人。身長が高いのでどの場面でも目立つ。
    内海詩野さんの声は武器、今作に絶対に必要なパーツ。
    『恋 其之弐』中村天誅氏の帰還兵は絵になる。
    ふと通り掛かる黒蜥蜴役の葛(かつら)たか喜代さんも印象的。
    『アメリカよ』越前屋由隆氏の独白。ポルノ映画館の便所に逃げ込んだ追われる強姦魔。大久保鷹氏ヴァージョンを観たことがある。
    作家は『身毒丸』に思い入れがあるのだろう。
    楽曲提供のユニットは「みづうみ」(ギター&歌・那須寛史氏/ピアノ&歌・秋桜子さん )。これが良い曲ばかり。LIVEに行きたくなった。

    客席の若い娘達が目を輝かせて楽しんでいた。寺山修司、アングラ、テント芝居・・・。間口が広いのできっかけとして良いイベントだと思う。帰り道の老人達も口々に「楽しかった」と。

    ネタバレBOX

    自分は全然アングラ演劇に造詣がないので昭和精吾氏がよく判らない。高取英氏も殆ど観てない。岸田理生さんもほんの少し。寺山修司氏でさえも何となく。まあこの筋の素人が森ようこさん見たさに無理して顔を出したテイ。でも観ると結構知っていた。いつの間にかに教育されていたのだな。「ああ、また暗転か・・・。」

    森ようこさんの出番がもっと欲しいところ。イルゼ・コッホやイルマ・グレーゼから生み出されたナチスの女収容所長イルザを思わせる役どころ。

    ※紫テントといえば話題は新宿梁山泊『ジャガーの眼』。唐十郎最後の弟子を自認する丸山厚人(あつんど)氏の酷評ポストから荒れに荒れたX。元高校教師演劇部顧問の賛同から唐十郎イズムとは何か?で揉めに揉める。怒り狂う水嶋カンナさん、紅日毬子さん。だがそれこそ唐十郎の凄さなんだろうとも思う。お前等に本当の彼の凄さは分からない!と叫ばせる純情、その情念。逆に外野は唐十郎への興味が増した。(そもそも自分は唐十郎にも『ジャガーの眼』にも何の思い入れもない)。六平直政氏まで出て来るとは。
    でもこれも正しい革命演劇の一つの在り方だと思う。(自分が当事者だったら怒り狂うと思うが)。黙って観ているだけの客を焚き付けるアジテートなんだから揉めて当然。ボロクソに叩く程の熱意すら今の観客は持ち合わせちゃいない。「つまらないから早く終わってくれ」位なもの。この後、飯を何食うかぐらいしか考えちゃいない。そもそもまともに観てさえいない。何も演劇に求めてなどいない。演劇がただの消費嗜好品になった現在、この話題で真剣になれるのは希有。全員Respect。水嶋カンナさんに更にRespect。

    ※いや、まだ揉めてんのか・・・。

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    2024/10/27 09:01

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