ガード下のオイディプス 公演情報 フライングシアター自由劇場「ガード下のオイディプス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    オイディプスを主役にするギリシャ悲劇群は、ずいぶん乱暴な親子関係が王の政権の変遷に織り込まれていて、現代人にはついていけない話と感じる。神話的寓話としては、いや、教養としては‥などというあさましい見方についなってしまう。
    この串田和美のオイディプスは、今までのギリシャ劇とは全く違うタッチで「ガード下の」などと言いながら、主筋の話を原作に取っていながら陽気で寛容、六本木時代〈ほぼ60年前〉の自由劇場のような舞台を繰り広げる。
    劇場のすみだ倉も当時の自由劇場のガラス店の倉庫というのに近く、劇場に入るとステージ中央に引かれた黒中幕ホリゾントも明けてあって道具の置かれた舞台裏まで見通せる。舞台の下手壁には、もう58年前になるという自由劇場初演の「イスメネ」(オイディプスのの妹を主役にした作品)のポスター、上手にこの公演のポスター。今見てもコカ・コーラの瓶を中心に置いたイスミネのポスターは古びていないし、現ポスターは宇野亜喜紀良である。串田和美らしい音楽劇の構成になっていて、音楽はDr.kyOn.。演奏するコンボが下手に乗っていて、ブレヒト劇風に進行に応じて演奏合唱する。これで「悲劇」性はかなり「寓話」風になって、人間運命の悲劇が、運命は避けがたし、笑ってしまって生きていこうぜ、の喜劇性に転化された。
    いかにも串田和美らしく、かつての60年代の反逆精神は今も生き生きと息づいている。かつてテントに媚びなかったように、今風抽象舞台でもない。突っ張っているわけでもない。
    時代を体現しているような近接ジャンルの才人とのコラボを忘れないのも変わらない。今回はDr.kyOn.の音楽が効いた。他には自由劇場からコクーンにかけて一緒に仕事をした古い仲間や新人が加わってぃる。松本から東京に戻ってまだ二年目だから俳優は、親子(串田和美。十二夜)以外は自由劇場時代からの大森博史をのぞけばゲスト出演だが、王妃の大空ゆうひ、若い山野康弘、体躯で圧倒する体操出身の大野明香音など、結構しっかり個性的で今後の劇団活動が楽しめそう。
    問題は入りで、倉は大きい小屋だが、ここで8割弱。夜公演だったが30-40歳代の女性が軸。若者が来るようにというのは、酷な注文だがそこに応えてこその串田和美だ。
    先日見た松本修も右顧左眄していない。この年代なかなかしぶとい。岩松了、北村想、川村毅、がんばれ。あなた方の健闘が日本の新劇を支える。


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    2024/10/24 10:55

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