『chill』 公演情報 劇団鮫軟骨「『chill』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「僕は普通じゃない」…サラリーマンになった僕は、人間関係に苦しめられたが 今はその人間関係に助けられている。登場するのは皆 善人ばかり、それでも誤解や思い違いによって ぎくしゃくする人間関係の難しさを温かく見守ったヒューマンドラマ。また人の思いや考え方は複雑、一方向だけではなく 表裏(双方)を描く。変哲のない日常風景はリアルではあるが、舞台としては何か物足りない。惜しい。確かに笑いや泣きといった場面は描かれており それを紡いでいる。しかし それは表層的に並んで描かれている といった印象を受けた。

    ラストは、主人公 杉本応助の妹 が兄に「運を使い果たしたね」といった件で何となく想像が…。公演は、何事も努力、やれば出来る といった根性論的なサラリーマン人生を少し見直すといった観点で描いている。何も道は一つだけではない、ただ自分に合った選択肢を見つけられるか否か。物語では良き伴侶と仕事を見つけて心豊かに そんな成長譚でもある。いろんな意味でちょっと疲れている人にはお勧め。
    (上演時間2時間20分 休憩なし) 【B】 

    ネタバレBOX

    舞台美術は 中央に四角いボード、その左右は角材で囲った 木枠の出捌口、客席側にも同じ出捌口、要は四隅が出捌口になっている。天井には角材や裸電球が吊るされている。物語の展開(民宿)によって中央床にテーブルを設えその周りに板席を作る。板(床)は、チラシと同じような絵柄。客席は三方囲み。上演前にボード奥の螺旋階段をスーツ姿の男女が整然と降りてくる。

    物語は、応助の弱く ぎこちない独白から始まる。社会人になってから対人関係に悩み、人混みは勿論 知らない人と話すだけでパニック障害を起こす。始めのうちに彼の性格などを説明する。或る日 東京への出張を命ぜられるが街中で気分が悪くなる。その時助けてくれた きよ と結婚し、地方で民宿を開業する。その名は「民宿 助きよ」? そこに来る宿泊客や地元の人々との交流を通して、人との関わりを克服していくような。

    日常を淡々と描いているが、それまで鼻持ちならない奴、差別的な考えを持った者として描いていた人を別(その者)の観点で描き出す。例えば会社の同期が宿泊に来て、社内で苛めていたことを謝罪する。また視覚障碍の女性を伴ったカップルの結婚を反対する 理解のない姉など。しかし何故そのような態度をとっていたのか、それまでに伏線なしで突然理由を明かす。物語の展開は好かったが、紡ぐエピソードのようなものが深堀出来ていない感じだ。上演時間との関係もあることから、描くエピソードとその内容にメリハリが欲しい。

    卑小なことだが、いくつか気になる点が…。まず 視覚障碍者が勝手を知らない民宿の中で白杖を使わず歩くのか、次に冬にも関わらず薄着でハーフパンツ姿に違和感がある。周りは冬着なのに、何人かは夏着というアンバランス。いくつかの場面で衣裳替えしているので、対応可能だと思うが…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/10/03 16:47

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