実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かった、よかったのその前に「みんなのことが大好き」と叫びたくなる演劇だった。一人一人(一頭一頭?)がぐっと愛おしく、きちんと哀しかった。ラスト、涙で霞んでゆくその風景は雲への突入を思わせるようで、空へ、もっと空へと祈るように見ていた。
青春の終焉と世界の終末が互いを乱反射する様に立ち上がっていって、その狭間から溢れる光が眩しかった。"想像の翼"なんて言葉があるけれど、これこそまさに、という滑走をからだが、浮遊をこころが感じていた。
あのシーンを生み出したのは大袈裟でなく愛と信頼と想像なのだと本気で思った。思えた。
本当にきれいだった。
130分とあり正直身構えていたけれど、どの時間も、そしてどの記録も大切で、置き去りにして飛んでいくなんてできなくて。観終わった後にここまでタイトルが刺さる、刺さっていつまでも抜けない作品も珍しい。
俳優各々のチャームが活かされた配役も、そして音楽が物語に与えるドライブも素晴らしくて、さまざまな瞬間を忘れられそうにない。
前作に引き続き瀬安勇志さんの悪役に滲む悲哀、対極の役とをこなす力にも魅せられた。揺楽瑠香さん演じるアンテナの辛抱強い明るさが灯す解放と浄化には、人間に叶わぬ飛ぶことへの憧れと衝動が忍ばされているようでもあって。行き場のない意固地さや持て余したエネルギーを時に大胆に時に繊細に体現した端栞里さんとユガミノーマルさんも愛おしく。そしてそんなみんなを守り、そして愛され慕われる先生役の亀島一徳さんの包容力...。
賑やかな青春の中で密やかに芽生える恋心や友情の描写もかわいくて、切なくて好きでした。
前作よりもぐっと劇世界の密度があがっていてそこにも羽ばたきを感じていました。
今後の飛躍がますます楽しみです!
誰も彼もが自分の空を飛ぼうとしていることに胸を打たれた。そのことを互いに信じることができたら私たちはきっと鳥に、もっと鳥に。
『バード・バーダー・バーデスト』