実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/09/26 (木) 18:30
久しぶりのアーサー・ミラー
アーサー・ミラーに初めて出会ったのは半世紀近く前の大学の教養の英語の授業で「A View from the Bridge」だった
「るつぼ」はその2年前の17世紀末の魔女狩りを素材にマッカーシズムへの警鐘を鳴らした作品だ
中心となるアビゲイルとプロクターの妻の二役の絵里とプロクター役の平澤智之、それにその召使メアリー役の山本麻祐が熱演だった
簡素なプロジェクションマッピングのみのセットで会話劇を引き立たせていたのだろうが、さすがにそれて休憩なし2時間40分は長かったな
それと多様な起用という趣旨はわかるものの、キャストの力量に差がありすぎた
台詞のない時には棒立ちの者や、男優陣には滑舌が悪い役者も
2024/10/05 11:26
ご説明いただきました通り、本作品はアーサー・ミラー自身が直面したマッカーシズムに対して書かれた作品で、時代設定は17世紀のセイレムという魔女狩りで有名な事件の場になっていますが、実際の内容は当時のアメリカを描いたものであります。これは同時に、現在の世界にも通ずるもので、私達が今まさに直面している時代そのものでもあると考えられます。内容的には、派手な立ち回りの場面がなく、会話劇だけですべてが進行してしまうのですが、これもミラーの脚本の緻密で素晴らしいところなのでしょう。
舞台装置や音響照明等を使用せず、衣装も普段着に近い形で上演する、という形は、主宰の平澤智之が長年所属しておりましたシェイクスピア・シアターで用いられてきた舞台形式で、キングスメンでも旗揚げ公演からそれに準ずるスタイルをとっており、今回もこの脚本を活かすためにこの形式での上演となりました。ただノーカットだと三時間を超える大作で、カットを行ってもご指摘の通り休憩なし二時間半は長いと感じられるかもしれません。
キャストの力量についてもご指摘をいただき、今後の課題とさせていただきたいと思います。ただ、各役者は素晴らしい力を持っている人達でしたので、それを舞台上で全開にして見せることができなかったのだとしたら、それは個々の役者の責任ではなく、演出側の力不足のせいであると、重く受けとめております。客演として出演してくれた役者の方達はこれからも数々の活躍をされる方達ですので、他の劇場でご観劇の際にも再会されることもあると思います。どうぞこの方達の今後の活躍を楽しみにお見守りください。