楽屋ー流れ去るものはやがてなつかしきー 公演情報 劇団演奏舞台「楽屋ー流れ去るものはやがてなつかしきー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    「楽屋」は数多く観てきたが、その中でも最高だ。
    舞台美術は 存在する空間の違いを巧く表し、演技は 劇中劇と楽屋でのリアルな演技(会話)の違い…台詞を借りれば、澱んだ空気感がしっかり表現されている。勿論「女優」という職業、というか「役」への執着、執念が切なく痛く そして怖いほど迫ってくる。

    女優が演じる女優の物語。その4人の時代背景と性格を鮮やかに描くことによって、漠然とした「女優」像が浮き彫りになる。時代は変遷しても、人を押し退け、傷つけても「主役」の座は譲らない。案外それが女優「魂」なのかもしれない。この魂に 如何に命を吹き込むか、生への執着・執念に通じるものを観じた。
    満席。この公演を観れたことはラッキーだった。
    (上演時間1時間40分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に通路がありその両方に鏡台を思わせる刳り貫き。上手には化粧台がありビール瓶などが。壁には多くの衣裳が掛けてあり、中には三度笠もある。勿論 演じる役に応じての衣裳や小道具・小物を配している。舞台奥の上部に照明があるが、後々これが実に効果的な色彩を照らす。

    女優による女優の物語であり、その年代や立場、そして想いが異なる女優をどのように演じるかが肝。男優4人ではなく、女優というところに女の情念が痛々しく荒々しく剝き出しになる。この公演では、定番と今まで観たこともないような演出がある。まず年代の違いを表す台詞の違いなどは定番。そして衣裳は女優A(典多麿サン)は絣の上着にもんぺ、女優B(岸聡子サン)は普段着、女優C(美ゆき サン)は舞台衣裳、女優D(池田純美サン)は白地の浮遊感ある(寝)服、そこに夫々の情況を表している。

    女優AとBのいつ来るとも分からない出番を待っていた時の心境、それを少しコミカルに描いているよう。勿論、いつまで経っても表だった出番がない悲哀が語られている。しかし、女優Dが現れ女優Cへ役を返すよう迫る。それまでの雰囲気が一変するような狂気が感じられる。敢えて前半のAとBの場面を弛緩するような描き、そうすることで後半のCとDの鬼気迫る場面に緊張感が漲る。諦念と欲望という心情の違いが明確になる、そのメリハリの利いた演出が上手い。AとBの飄々とした惚け味、Cの孤独で峻厳さ、Dの情緒不安定な狂気といった印象付け。他の公演でも似たようなものだが、冒頭のCの劇中劇(演技)から楽屋での素振りへの変化は、女優(業)を端的に表しているよう。

    演奏舞台らしい生演奏の効果…特にCとDの緊迫した遣り取りの中、不安・不穏を煽るような音楽が流れ心情を露にするようだ。今回は照明効果として女優1人ひとりに配色しているよう。女優Aは青(火傷痕 痣)、女優Bは赤(自傷 血)、女優Cは白銀(独白 空<クウ>)、そして女優Dは…。色に染まっていないDは死して なお女優であり続けたいと願う気持ち。女優は何色にも染まる=どんな役も待ち受けている そんな印象が感じられる。AとBの言い争い時の青×赤の照明点滅は 実に効果的だった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/09/07 20:29

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