悪態Q 公演情報 劇団不労社「悪態Q」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    『SAW』を思わせるコンクリート打ちっぱなしの殺風景な一室。会場ごと見立てて演出するという“空間への当て書き”、東京公演は北千住BUoY(ブイ)。かつて陰惨な事件が起き心霊スポットにされた廃ビルの一室のような佇まい。無機質で不穏な雰囲気が色濃く漂う中、気の違った陽気なSEがけたたましい。ムードは『ホステル』や『パージ』など病んだ作品の系譜。

    幼稚園の卒園式の為に先生達が出し物の稽古中。ラジカセで『ピンポンパン体操』を流し愉快に踊る。黄緑(ライトグリーン)ジャージのむらたちあきさん、水色(シアンブルー)ジャージの永淵大河氏、紫(ロイヤルブルー)ジャージの荷車ケンシロウ氏。ジャージはやたらスタイリッシュ。愉快にコミカルに元気一杯に踊る。どうも男性二人はむらたちあきさんに好意を抱いているようだ。恋の鞘当てにヒリヒリした空気感。

    ズンズンズンズンズンズンズンズン ピンポンパポン
    ズンズンズンズンズンズンズンズン ピンポンパポン
    がんばらなくっちゃ がんばらなくっちゃ がんばらなくっちゃ

    延々続く気の違った唄に頭がおかしくなりそう。間奏に挿まれるむらたちあきさんが作った、園児向けのクイズ。ロールシャッハテストのようにサイコパスを炙り出す精神異常者向け。

    むらたちあきさんは凄く魅力的だった。元気ハツラツなメンヘラ。
    永淵大河氏はマトモな常識人としての立ち位置で「ちょっとそれ園児向けのクイズには相応しくないのでは?」と冷静にツッコむ。
    荷車ケンシロウ氏は十一重(以上)人格者役も狂ったようにこなすハッスラー。

    5つの連作集といった感じだが、とにかくしょっぱなの奴が凄まじい。これだけで元は取れる。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    ①貧血気味のむらたちあきさんに「自宅でモロヘイヤを栽培しているので食べに来ないか」と誘う荷車ケンシロウ氏。彼女がトイレに行った際、永淵大河氏は実は自分等は付き合っていると伝える。大ショックで失神する荷車氏。ほんの冗談だったと慌てる永淵氏。むらたさんが赤いゴムボールのような物を持って帰って来る。「今、トイレでこれを吐いた。これはさくらんぼうだと思う。」中学時代にキスの為にさくらんぼうの茎を舌で結ぶ練習を毎日していた。ファースト・キスの際、それをしたら彼がパニックになってしまい舌を噛み切られてしまった。それから咽喉マイクを装着しているのだ、と。崩れ落ちる現実感、立ち尽くす永淵氏。

    ②サッカーの試合、監督のむらたさん、選手は荷車氏独り。補欠の永淵氏は「出してくれ」と頼む。荷車氏は十一重人格で選手全員を兼ねている。選手は独りでボールが11個あると監督は説く。王蟲を思わせる赤いボールに覆われた化け物と化す荷車氏。

    ③ピンポンパン族の生態。クロード・モネの『印象・日の出』。

    ④政治家に取材を申し込むジャーナリストの荷車氏。秘書の永淵氏は何度もあしらう。政治家の妻におさまったむらたさんはかつての恋人。到頭現れた政治家は秘書と同一人物であり、トゥレット障害(チックという神経精神疾患)の汚言症であった。これがタイトルの所以か?

    ⑤選挙に立候補した、むらたさん。自分を支持するものは自分自身だけだと理解する。行こうか!様々な色のカラーボールが転がっている。

    表現がどうたら演劇がどうたら劇団がどうたら的なものには一切興味がないのでラストの方はキツかった。本当にこれっぽっちも興味が湧かない。①がずば抜けていたのでこれを基点に作劇して欲しかった。何をどう伝えたいにせよ、基点だけが互いの共通概念。そこをないがしろにするとカラオケで知らない曲を延々と熱唱されたぐらいにぼんやりする。

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    2024/09/07 14:48

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