ニルバナナナノニ 公演情報 発条ロールシアター「ニルバナナナノニ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     開演前にはシャンソンの名曲が流れ、板上センターには上部をブルーシートで覆われた直方体が鎮座している。この下手には紐が張られ洗濯物が干されている。こんな舞台美術を背景にオープニングではムード演歌を歌う歌手が登場、前説を務めつつなだらかに導入。華4つ☆ だが解釈次第だ。

    ネタバレBOX


     歌手退場と同時に直方体の片端を持ち上げる者が居る。中から現れたのは1人の初老の男。設定は川岸、この直方体はこの男の段ボールハウスである。人1人が横になって寝るサイズちょっきりなのは、不法占拠に当たるから地元の市役所職員から大目に見て貰える範囲で遠慮がちに設置されている訳で住人の性格を表わしている。
    ところで、今作のタイトルには恐らく仕掛けがある。東南アジア等で料理用に用いるバナナに掛けた意味とサンスクリット語のニルヴァーナに掛けた意味とのWミーニングである。この点に気付けば案外すっきり解釈できるのではないか? 料理用バナナの話は台詞に出て来るし、実際にバナナを食べるシーンも出てくるがこちらは普通に果物屋で売られているバナナで、肩透かしを食わせるのも作家のジョークと捉えられよう。一方のニルヴァーナは涅槃の意である。即ち、悟りの境地を指し、同時に生命の火が吹き消されたということでもあるから空でもあろう。西洋流の概念では自由の究極の形をイメージできるかも知れない。何れにせよ我らは生、老、病、死からは逃れ得ない。而も世の中は様々な柵でできている。運、不運は己の生まれる時も、場所も自ら選ぶことすらできないことから初めっから決定されていると言えないことはない。このような不公平にも関わらず取り敢えずの生活は総てが平等という建前で始まっているのが我々が暮らす社会の在り様である。このギャップ自体を生きる人々の安らぎが何処にどのような形で存在し得るのか? そんな深刻な問い掛けすら感じとることも可能な作品ではあるが、このような受け取り方をしなければ一体何が描かれているのか? 正体を掴み難い不思議感覚で観ることのできる作品でもある。更に深読みすればこのように観る側の自由が保持されている点に今作の狙いがあるのかも知れない。

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    2024/08/31 09:08

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