ログログ 公演情報 キリンバズウカ「ログログ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    丁寧に積み上げられた台詞劇
    場面展開や時系列の進め方の演出が巧み。
    どの登場人物も役者がうまく魅力的。
    会話がいいし、面白い。
    思わず引き込まれた105分。

    ネタバレBOX

    長く生きていると、誰もがどこかに空白を持ってしまっている。
    それを埋めないと生きていけない。

    記憶は曖昧だ。
    自分の都合の良いように置き換えたり、すり替えたりすることはよくある。
    と、いうか、他人の記憶と違っているところがあったりすることも、ままある。
    共通であるはずの出来事なのに、視点が違ったり、ポイントが違うことによって、記憶が異なるぐらいよくあるし、誰かと誰かを取り違えてしまうこともあったりする。

    それが極大化してしまったニイムラという存在が現れる。彼は、同じクラスメートにとっては、重い黒い点となって、彼らの歴史に爪痕を残している。
    それだけに、「ニイムラ」という存在に対する記憶は、なんとか一致させたいと思うのだ。それは、クラスメートたちにとっては、「真相」というモノが抜けてしまった、ぽっかり空いた「隙間」でもあるからだ。

    そうした、「特殊な」、そのニイムラの存在は、この舞台で象徴的に位置づけられる。
    何かを何かで補完する、埋める、という意味において、

    それは例えば、亡くなった子どもの代わりに、夫の弟だったり、引きこもっていて、空いたままの記憶だったり、ココロの隙間を埋めるための、愛情だったり、ギャンブルだったり、お金だったり、未来に伸びる空白を埋める飛行機の折り紙であったり、ニイムラの事件に対する真相だったり…。
    そんな、代替物でも心の平和につながったりする。

    空いてしまった隙間(空白)は、埋めなくてはならない。とにかく、とりあえず手元にあるもので補完(補充)して、世界は危うい姿勢で、ようやく立っている。

    なくなった何かを、それと同等の質量で埋めるには、そんな間に合わせで埋めるには、まだまだ不十分だけれども、「幸せ」と呼ぶには十分な質量ではあろう。
    みんな、実はそんな感じでやって(乗り切って)いる。

    そんな、なんとかギリギリに立っていて、「幸せ」な人々の姿があった。
    あり合わせの何かで隙間を埋めて、それでもって、過去を、今を、そして明日を生きていくのだ。


    役者では、ニイムラを演じた三浦俊輔さんが出色。シマウチ(中川智明さん)の体内から(暴)力が溢れそうなのに哀しい感じもよかったし、イサミ(岡田あがきさん)の女子力が高そうなところや、ワダ(堀越涼さん)のしなやかさも印象に残る。また、ナカヤマ(こいけけいこさん)の「あ、いるいる」感というか、男前なところが、中学の女友だちを思い出させてくれた。好感度高い。

    ただ、カウンセリングをするのならば、ニイムラとはそれらしい会話が必要ではないのだろうか。基本的な手法ぐらいは一応ある上での、会話(カウンセリング)であったほうがよいのではないかと思った。また、睡眠薬の多量摂取で入院した元看護師に対して(本人は「そういうのじゃないから」と言ったとしても)、医師の「頑張って」の一言は不用意すぎるのではないだろうか。医師だから、それは逆効果だということぐらいは知っていて当然だろう。

    あ、そうそう前作『スメル』からの引用とかがさらりと入った遊びが楽しかった。

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    2010/08/28 05:01

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