ぷろぽおず 公演情報 森崎事務所M&Oplays「ぷろぽおず」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    自然体!狂言によるチェーホフ劇
    大蔵流茂山家の若手狂言師たちは、ライブ感覚で狂言を若者に広めた第一人者的存在といってよいだろう。今回も会場の前3列目くらいまでは熱狂的な若い女性ファンが占めている。野村萬斎や鵜山仁と組んで不条理劇にも出演してきたが、芸術寄りのスタンスではなく、手の届くところで何かやっているという親近感がある。
    チェーホフ原作の「ぷろぽおず」と古典の「鎌腹」の2作を上演。両者に共通する雰囲気を感じ取ってもらい、古典の狂言にも親しみを感じてもらおうという、茂山家らしい思惑がある企画。
    茂山家の公演というのは、国立能楽堂の定期公演などを除き、新作・古典問わずたいてい出演者のトークが付き、小劇場劇団のように物販や客の送り出しも全員でやるので、今回もそれを期待していたファンが多かったようだ。
    が、今回はそれはなかった。あうるすぽっとのチェーホフフェスティバル参加作品ということで、ふだん狂言を観ない初見の客も足を運んだかもしれず、いつものように、解説を兼ねたトークがあってもよかったように思う。
    チケット代は少し高すぎるのでは。短編劇だし、客層を考えてもう少し安くしてほしい。

    ネタバレBOX

    先週末、方言による「プロポーズ」を観たばかりだったが、狂言版も原作に忠実で、まったく違和感がない。そちらのレビューでストーリーは解説したので、今回は省きます。
    新作を手がけるときの茂山家の特徴で、「婚カツ」や「賞味期限」など現代用語もサラリと入れて、テンポがよい。
    緊張でコチコチというちょっとオーバーな若い男の演技も、茂山宗彦は狂言師なので嫌味なく見せた。
    女の茂山逸平も可愛らしく、口論になったときの態度の豹変に説得力があり、単に気が強いとか、「わわしい女」ではなく、裕福な家の女性の品のよさやプライドを感じさせたのはお手柄。茂山正邦の父親はやや打算的で、それが私有地の境界を曲げてしまっても悪びれないこの家の一族らしさが感じられた。
    これまで何作かこの作品の翻案を観てきたが、いまさらながらチェーホフの普遍性に感心する。
    「鎌腹」は、怠け者で女房に鎌で追い回された夫が、「女房に侮辱されるくらいなら、鎌で腹を突いて死んでやる」と言いつつ、怖くて死ねず、何だかんだ言い訳する。
    正邦のダメ男ぶりが現代的で面白い。鎌で追い回すなんてDVで、ワイドショーの社会事件に出てきそうな鬼嫁だが、けっして深刻にならない。
    これが古典としての狂言の良さだと思う。現代劇のように「ツッコミが甘い」なんて非難される心配も無く、笑って観ていられる。

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    2010/08/28 00:10

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