歩かなくても棒に当たる 公演情報 劇団アンパサンド「歩かなくても棒に当たる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    追加席販売でどうにかチケットにあり付けた。
    3度目のアンパサンド。前に受付で買った過去作も読んで都合4作品を賞味したが、独自の世界観はまだこの先の行方を探して意外な展開の余地のある佇まいである。

    ナカゴーorほりぶん(故鎌田順也作演のユニット)のエッセンスを(期せずして?)継承する作り手かも・・と前に書いた事があったが、作者安藤奎が演劇人を目指して上京後あれこれ模索の途上で、実はナカゴー公演に関わったようである(げに納得である)。
    アンパサンドの劇では終末へ向かう阿鼻叫喚の時間が用意されているが、ほりぶんが正にヘトヘトになるまで感情と汗を絞り出す時間があり、それを延々とやる(観客も呼吸困難になる)展開を味わう。その中核メンバーの川上友里が今作には招かれ、一対多の構図で彼女が暴れ役である。
    ほりぶんとの違いは、ほりぶんでは登場人物全員に熱があるのに対し、今作は特にそうであったが他の人物がナチュラル。後部席からでは放出する熱量をもう少し上げてほしかった。

    ネタバレBOX

    脚本の上では、ゴミ出しに降りてきた主婦らがあれこれあって、川上(既に死んでいるので幽霊らしい)の牙に掛かり、「ちょっとしたルール違反」に対する制裁を受けるのだが、警戒しながらも一人ずつ言葉の罠にうっかり牙に掛かり、最後に一人残る。彼女は恐れつつ「実は、実は・・」と過去の「違反」を告白する流れになるのだが、もう「あれしかない」告白内容が飛び出るのを予想していたら、期待とは異なり、言わば「心の中では川上の死を喜んだ」的な内心の罪の告白になっていた。肩すかし。これではパンチが足りない。

    実はその前、ゴミ出しにうるさく毎日朝ゴミ捨て場前の椅子に座っている川上が「死んだ」経緯が語られるには、その日空き缶を分別せずに出したゴミを川上が整理する際、カランと転がった缶を追いかけて道路に出た所、滑ってトラックに轢かれた、という。
    そうであれば、最後に来るオチは「あなたが死んだ原因=缶を出したのは私です」、では無かったか? 自分が憎み、また自分を殺した元凶でもあるルール違反のゴミ(空き缶)の出し主の告白に対し、どう反応するかは頗る楽しみだし、息をのむ展開になったろうに、なぜ作者はそうしなかったのか? 私は疑問だ。それこそ妙な計算を働かせて「肩すかし」を狙ったのか。それとも、川上に反応をさせづらかったのか。
    私なら、こりゃ手の付けられない荒れ模様になるか、と思いきや「他のと同じ」だったとか(他の人物がそう台詞で説明してもいい)、逆に改心してしまうとか、怒りが行き過ぎて平穏になり、天上に帰って行くとか、どんな展開も受容できたのにな・・。
    「惜しいな~」と感じながら劇場を後にした次第であったが、独自の世界は築かれており、もっと探求されたし。
    次もきっと観るだろう。

    0

    2024/08/27 01:45

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大