実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
冒頭から 物語へ集中させる雰囲気作りや関心を高める工夫、見応え十分。明治時代の長野県、そこの旧家を舞台にした悍ましい伝承物語。当日パンフに家系図が記載されており、登場する人間関係(立場)を明確にしている。時代背景と土地柄、そして本家・分家という家(家長)制度を絡め、人間の欲望 その深淵を描いている。
「姥捨て」する迄を前半、「御山入り」で自分の欲望と向き合うことを後半とすれば、その展開と観せ方も秀逸。隠された事実、それを解き明かすように七曲り先の六道(りくどう)、人々の欲望が剝き出しになって浮き上がる。各人の欲望に応じてテンポよく場面転換し、欲望の鏡合わせのような存在が繭(吉水雪乃サン)、その妖しい演技が印象的だ。
ちなみに舞台壁、前半と後半とで荒い岩肌から洞窟の中といった変化をみせ それが鈍く妖しく輝いているようだが、これにも伏線が仕込まれており巧い。
物語には、この家系とは別の人物を登場させ、人間の欲望とは この旧家に限ったことではない、そんな闇の広さと深さを鋭く抉っている。獣のような 出で立ちで、今まで「御山入り」した人々の魂の声が聞こえていた鍵屋の又やん(祥野獣一サン)、一方 実直な奉公人風の銭屋の照やん(山村鉄平サン)、後々の変化も含め この2人の存在が妙。
(上演時間1時間50分 休憩なし)