プロポーズ~下北半島編~ 公演情報 嗚呼!「プロポーズ~下北半島編~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    方言劇は面白い
    原作はチェーホフ。私がこの戯曲を初めて知ったのは、いまから40年以上前で、そのときも日本のある村を舞台とした、やはり方言による翻案劇だった。
    筋立てがシンプルなので日本の劇に翻案しても違和感はなく、今回、下北弁のこの芝居を観ようという気になったのも、そのときの記憶があったからだ。
    のし紙仕立てのユニークなパンフレットだが、作りがいかにも内輪向けなのが残念。「嗚呼!」は「SPACE U」という劇団内のユニットのようだが、演出家の弁もプライベートなエピソードのみで、公演内容に触れていない。
    下北半島の観光案内より、下北弁で上演しようと思った動機や、代表的な下北弁の単語紹介などを載せてほしかった。
    11月に下北沢でも再演されるそうなので、興味のあるかたは、どうぞ。

    ネタバレBOX

    コレドには初めて行った。開演前、大漁旗が飾られた舞台に、鳥羽一郎や吉幾三のド演歌が流れていて、チェーホフとはミスマッチな雰囲気で戸惑ったが、劇中音楽はピアノの生演奏(三辻香織)。劇が始まると、下北弁はまるで外国語のようで、引き込まれた。
    漁師、鳥羽三郎(小田桐一)の家に、青年、新沼謙次郎(中田寛美)が決意して、娘の聖子(田村まどか)への結婚の申し込みにやってくるが、不器用でシャイな性格のためか、緊張で本心がなかなか伝えられない。やっとの思いで父親に伝えると父親は大賛成だと言う。父親が娘の意向を確かめると、娘も満更ではない様子。
    しかし、二人きりになると、ウニの漁場の縄張りを巡り、両家の主張が対立。イノシシ猟に使う飼い犬の自慢でも口論になる。事情を知った父親も参入して、娘の肩を持ち、謙次郎にウニの殻をぶつけて乱闘になる。謙次郎が心臓が苦しいと苦しみだし、気を失ったことから父娘が慌て、謙次郎が意識を取り戻してめでたく、婚約成立。
    田村の聖子は演技力もあり、魅力的な女優で、雰囲気や口跡が若いときの故・藤間紫を思わせる。小田桐はトボケた味わいがある。中田は役柄がそうだとはいえ、演技が硬すぎる感じで、台詞も聴き取りにくかった。
    小道具に現代的な給水ジャーを使うのが、民家の雰囲気に合っていなかった。しかも、水が入っていなくて、飲む場面はマネゴトのようだが、興奮した台詞の応酬で、かなり出演者の喉が渇きそうな芝居なので、本物の水を飲めるようにしておいたほうがよかったのでは。
    役名がすべて歌手の名をもじっているのがご愛嬌だが、どうせなら聖子よりもさゆりか冬美のほうが演歌の世界に合ってたのでは?(笑)
    ピアノ奏者もちょっとだけ劇に加わる演出がよかった。
    カーテンコール、方言指導の島野温枝さんがちょうど婚約されたということでお祝いのサプライズ演出があったが、どうせなら下北弁での稽古の感想などがほしかった。
    終演後、席を立つ観客もほとんどいなくて、知り合いが多かったのかもしれないが、外部観客を動員する目的でCoRichにも公演情報を載せたのだと思うから、もう少し制作運営にも外向きの対応がほしかった。新しい観客を開拓したいのならば、の話だが。
    余談だが、40年以上前の戯曲初見のときは、新劇俳優の井上昭文と阿部寿美子が主演で、「結婚の申し込み」という題名での上演。場所は歌舞伎座、梨園出身の映画スター、初代中村錦之助公演昼の部の最初の演目だった。歌舞伎低迷期で歌舞伎座も歌舞伎以外の公演で客を埋めるしかなかった時代とはいえ、ベテランでも地味な脇役俳優2人に、なぜ錦之助も出演しない一狂言を持たせたのか、いまだに不思議でならない。

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    2010/08/22 08:59

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