愚者と星と死神についてのいくつかの考察 公演情報 feblaboプロデュース「愚者と星と死神についてのいくつかの考察」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    人生にはうまくいかない時や躓く時もある。これから先どうすればよいのか迷い悩んでしまう。そんな時 占ってもらい、少し背中を支えてもらうか押してもらう。占いは悩み相談でもあり、救いという自己暗示の効果を期待しているよう。

    タイトルが意味深であったが、「愚者」「星」「死神」は、タロット(占い)結果における過去・現在・未来を表している。物語は、恵比寿にあるBarを舞台に繰り広げられる再起劇。まだ何者にもなれない症候群のような若者、職場環境・人間関係に悩む中年女性、承認欲求が強いユーチューバー、そしてBar経営者の気持を丁寧に掬い上げる。
    登場人物は全て女性、一生懸命やればやるほど人との関係が拗れる。そんな歯がゆい思いが激情となって ますます相手を追い詰める。日常に見られる どうしょうもない光景、それでも占いに救いを求める切なくも滑稽な話。

    エビスSTARバーを舞台に、間近で観る光景は、そこで起きている日常を覗き見ているような感覚。公演の魅力は、等身大の人々のリアルな生活が描かれているところ。そこに現代的な問題を落とし込み、その問題の捉え方に表裏があること、更にそれをタロットカード(占い)に絡める巧さ。まさに人間洞察、そこに脚本・演出の池田智哉氏の真骨頂をみる。
    (上演時間1時間20分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、会場になったエビスSTARバー店内そのもの。冒頭、この店の客で占いをしている女性 渡邉さくら(40歳代)が店のバイトの女性 大園明香(20歳代)の運勢を鑑定している。占い歴は浅く、タロットカードの絵柄の説明(あんちょこ)を見ながら話している。さくら は企業のベテラン職員だが、後輩の指導が厳しかったのかパワハラで休職を命ぜられていた。

    最近、恵比寿界隈でよく当たる占い師がいるとの情報、その あやふやな情報をもとに飛び込んできた女性、実は相手と上手くいかないという。相手は男ではなく漫才コンビを組む相手のこと。そして怪しげな変装をして来店した女性、実は店長 伊藤由依の姪 山下莉奈でユーチューバーとして活動している。漫才コンビ<濱松>ー濱岸夏鈴と松田美波。1人は地道に稽古に励み、もう1人は占いで将来を…。その意識の違いで衝突し相手のことが解らなくなっている。まだ何者にもなれていない若者の悩み。また莉奈は手っ取り早く稼ぐことで承認要求を満たそうとしている。人間洞察が深く、リアルな人物像を立ち上げている。またキャストは等身大の人物を生き活きと演じている。

    占い(手段)は、占い師という見知らぬ第三者に悩みを打ち明けることで気持を鎮める。一方、占い師は 打ち明け話にどう寄り添った<言葉>を言うか。その<言葉>は厄介で、相手がどう受け止めるかによって薬にも毒にもなる。例えば 休職中のさくらは、一生懸命に後輩の指導をしたが、相手に厳しいと思われたらパワハラになる。漫才コンビにしても自分の主張と相手の気持を考え合わせること。そんな日常の一コマを切り取り、滋味溢れる物語を紡ぐ。

    冒頭 さくら曰く、タロットのカードには正位置と逆位置があると。占いによって自分の気持を整理する。今の状況をポジティブに捉えるかネガティブに思うかによって、自分の取るべき態度・方向が決まる、要は自分次第。物語は、このBARでの出会いが良い方向に向かう大団円、そんな希望がみえる。
    ラスト、カウンターの垂直下照明(シーリングライト)の諧調が実に印象的で余韻を残す。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/07/30 00:56

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