日曜日のクジラ 公演情報 ももちの世界「日曜日のクジラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    初見の団体だが、観劇して良かったと思える作品。何となくフィクション性とドキュメンタリー性を併せ持ち、どこかの街、ある家族などといった曖昧さ、しかし その中に表現し難いリアルな狂気を孕んでいるようで目が離せない。全編を貫く怪しく不気味な感じ、その独特の雰囲気・世界観が物語を興味深く そして力強く牽引していく。緊密な人間関係、濃密な会話、そんな張り詰めて逃れられない状況だが、何故か心地良さもある。観た回は満席、観応え十分。

    チラシには<架空の日本>とあるが、台詞から現代日本 しかも地域まで特定出来そう。この場所(憶測)が妙。自衛官の息子はパイロット、しかし3年前のある日 飛行中に行方不明になった。溺愛していた母の嘆き、残された家族の夫々の心情と周りの人々との関りが歪に立ち上がっていく。「日曜日のクジラ」ーこれは夢や希望を叶えるというよりは、儚さと願望 そしてラストは衝撃的な…。あまり記すとネタバレになりそう、ぜひ劇場で。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 7.31追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、MOTELを営んでいる桐野家のリビングをリアルに再現しているよう。中央にソファとテーブル、その後ろは摺りガラス戸、周りは整理棚、壁には飾り物で実際に人が住んでいると錯覚しそう。珠暖簾・ギター・コーヒーポット等。上演前には波の音。
    さて、当日パンフに矛盾を矛盾のまま、描きたいという想いでこの戯曲を書いた…ある種のわかりやすさを放棄した作品 と書かれていたが、その不安定で定まらない感じが 逆に不穏という怖さになっている と思う。

    物語は4幕。「架空の日本」、海岸沿いの国道にある小さな看板明かり…冒頭 何となく京都府舞鶴市を連想させるような台詞。舞台となるMOTELの経営者 桐野京子は自衛官になった息子 ひかる を溺愛していたが、飛行訓練中に行方不明になったまま。それから3年後、神の使いである「願いを叶えるクジラ」の噂が流れ、それを見つけるために三人のヤクザ者を呼び出すが…。

    ひかる は登場しないが、その嫁 工藤真美やその兄 丈一の存在によって不安もしくは不穏な様相を漂わす。母 京子、ひかるの弟 祐輝、妹 あかりという家族、更に あかりの友人 高橋海香や京子の友人 向井昌枝という家族以外の人々によって家族と町の状況を浮き彫りにしていく。母はひかるが小学生の頃に描いた飛行機の絵を褒めるといった溺愛ぶりを示す。母から逃避するように東北の自衛隊基地のパイロットへ。しかし、母はブルーインパルス飛行訓練を この地へ誘致し息子の晴れ舞台(姿)を見たいと思い、市長へ要請。何年か前 幼馴染の市長の不正、それを脅しのネタに飛行訓練の誘致を強引に行い、その結果 息子は行方不明になった。勿論 市長にも街の活性化という目論見があった。諸々の利害が一致したイベントであったが…。

    公演は母の不気味な存在感…一市民でありながら市長と通じヤクザを操る黒幕的な人物を好演。祐輝の真美への恋慕という個人問題、海香が東日本大震災 被災者といった社会問題、それぞれ違う次元の問題を点描し興味を惹かせる。しかし、何かに収斂するといった感じではなく、そこにある出来事を綴ったという印象。動的なラストシーン(ガラス越しの凶行)と静的な照明技術(モノクロ)は対照的だが 圧巻だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/07/26 17:28

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