尺には尺を 公演情報 イノセントギアカンパニー「尺には尺を」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    劇場がキーノートシアターから中野の劇場HOPEへ急遽の変更。その対応で大変だったと思うが、スタッフ応対はしっかりしており、舞台美術も違和感なく設えていた と思う。

    シェイクスピア戯曲で、未見の演目であったため興味を抱いて観に行ったが…。物語はそれほど難しくはなく、どちらかといえば劇中でも言っていたがTV「暴れん坊将軍」「水戸黄門シリーズ」といった、権力あるものが正体を隠し市中を見廻るといったもの。

    理性が欲情に絡め取られ転落していくといったストーリーだが、出演がすべて女優ということもあり、演じている男役の性欲感があまり感じられない。また全体的に台詞はしっかり聞こえるが、シェイクスピア劇独特の台詞回しのせいだろうか、今ひとつ〈言葉〉〈感情〉として伝わらないのが惜しい。人間が発する言葉、そこにある血肉のような生々しさが欲しい。とは言え、物語の内容はしっかり表現しており、分かり易く伝えているところは好い。
    (上演時間1時間40分 アフタートーク10分 計 1時間50分) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、基本対称になっており正方形/羽目板のような壁で囲い、夫々の上部には十字架が飾られている。そして上手下手に同じようなクリスマスリースのような飾りと観賞用の低木。
    物語は、タイトルに全て集約されているよう。つまり、劇中の台詞にも出てくる新約聖書の「マタイによる福音書」からだと思うが 「あなたが人を裁く同じ方法であなたは裁かれ、あなたが使う尺であなたは計られる」だろう。

    梗概は説明にある通り、ウィーンの公爵ヴィンセンショーは外交でウィーンを離れることにしたと言い、代理を厳格なアンジェロに任せる。そして 若い貴族クローディオは婚前交渉で恋人のジュリエットを妊娠させ、姦通罪でアンジェロから死刑を宣告される。
    クローディオの妹イザベラはアンジェロに面会し、慈悲を求めるが、自分と寝るならばクローディオを助けてもいいと持ちかける。イザベラは拒否し、刑務所でクローディオに潔く死ぬよう言う。そんな中 実は公爵は、ウィーンを出発しておらず、修道士に変装してアンジェロの動向を監視していたというもの。日本の時代劇、それも勧善懲悪ものといった印象で安心感があるが、早い段階で 先が見えているところに物足りなさを感じる。

    シェイクスピアの戯曲のなかでは上演回数もそれほど多くはないようで 先にも記したが自分も未見。登場人物は変わり者が多く<ダークコメディ>と呼ばれている。物語はそれほど難しくはなく、人間が持つ自我と欲望を剥き出しにした人々、その人物を役者はコミカルに演じている。茶目っ気の中に深い人物像を立ち上げようとしているが、台詞が伝わってこないのが恨み。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/07/12 06:54

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