『口車ダブルス』 公演情報 劇団フルタ丸「『口車ダブルス』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    講談風の語りを交えて描く現代劇ー保険営業の悲哀がしっかり味わえる。説明にあるヘッドハンティングされて新部長に就任したのは、保険営業のプロと素人の女性2人。対極の2人の部長が公演の肝。この2人が講談師の役割を担い、物語を膨らませていく。プロの部長は、部下を厳しく鍛えるが相談し難い。一方 素人の部長は相談し易いが甘く見られる。保険営業を通して人材管理・活用、そして育成・適所といった人間観察が透けて見えてくる。

    キャスト2人が、釈台代わりの演台に張扇を叩きながらリズミカルに語る講談風の話芸、そして現代劇にも現れる奇抜さ。「言葉のガソリンで回り続ける保険屋たちの群像悲喜劇」の謳い文句、いつの間にかノせられたシリアス/コメデイ。笑い続けた衝撃、いや笑劇だった。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、後ろの壁に大きさの違う歯車、壁際に段差を設え その上り下りで躍動感が生まれる。始めは 演台(可動式)が2つ並んでいるが、物語の展開で動かし情景と状況を作り出す。シンプルなセットであるが、そこが社内であり営業先、居酒屋等の空間を見事に演出する。さり気なく<第三生命>の看板が掲げられている。

    冒頭、講談師の口上によって 登場人物のプロフィールが紹介されながら1人づつ現れる。これによって早い段階で社内の立場や関係性、そして営業スタイルが明らかになる。キャスト陣は その人物像をしっかり立ち上げている。物語は何か目的に向かって収斂するといったものではなく、1人ひとり保険営業に対する考え方、顧客への接し方を通して人生の悲哀を表す。その人生模様―心理なり行動の様態を講談師が語ることによって、より鮮明になる。

    また講談師は新部長として劇中に入り込み、まったく異なる性格・立場によって社内の人事掌握をする。まさしく飴と鞭のような対応によって、人材の育成と活用が出来る といった典型的な描き方が共感を得る。またバーに現れナンパされる第三者をも演じ、出ずっぱりで、しかも多くの役割を担う2人(真帆サン、篠原友紀サン)の存在が公演の要。

    保険営業職は学歴やキャリアは不問、武器はセールストーク。好きなバンドを辞めた独身中年男、若くしてFPの資格を取得した計算ずく妻帯者、1人で息子を育ている謎の女、そして新卒など、世間に居そうな人物を登場させ、観ている人の心に訴える。勿論 皮肉・自虐や笑いを込めて。この営業職と一線を画す清掃員 五味豊(フルタジュン サン)の存在が妙。社内で自分の存在をアピールする、その自我と向上心は保険営業のみならず社会人の普遍的な姿を表す。

    舞台技術は照明の点滅や諧調、しかし それほどの印象付けは感じられない。また音響・音楽も邪魔しない程度、その控え目な演出が寧ろ良かった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/07/11 17:09

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