実演鑑賞
満足度★★★★★
なぜこの程度の事で「触法精神病施設」なる施設に幽閉されなければならないのか
なぜ家族は娘がこの様な目にあっているのを長期にわたって容認しているのか
それらの背景まで深掘りすれば、とてつもなく話は膨らんでいき、実際観終わった後には彼女達のキャラクターや台詞の端々から推測や憶測がいくらでも湧いてくる
そういった意味で目にした以上の情報、問題提起に富んだ作品
実際に舞台上で描かれるのは施設に収監された二人の女性(ペルセポネーとドーラ)の長期にわたる風呂場掃除タイムでの交流シーン
収監歴ではペルセポネー(森下知香さん)より2年先輩となるドーラ(室田百恵さん)はきっと社会に出ていれば並みの男以上に社会貢献できそうな頼もしい女性
お嬢様育ちで現状把握さえちゃんとできていないペルセポネー(天然が入っていてユーモラス)の良きアドバイザーであり良き話し相手
一見楽しげな会話シーンの連続でありながら、この病院ではろくな治療行為も行われず閉じ込めっぱなしである事がハッキリ炙り出される光景でもある
やがて二人が編み出した別の名前になって繰り広げられる現実とは別の世界
そこにはもはや恋愛欲求や食欲など入り込まず、ひたすら“憧憬”に特化されていくようで何とも切なく、時には狂気が混ざり込んだ美しさで妖しく輝いて見える
“相互依存”という状況は悪い意味で使われる事の方が多いけれど“相互依存”がなければきっとこの二人は廃人になっていたに違いない
後半 気の遠くなる様な50年を経て、彼女達がどの様に変貌していったのかは必見
お二人の女優魂を存分に味わい、その後の人生に思いを馳せ、前に述べた「実際観終わった後には彼女達のキャラクターや台詞の端々から推測や憶測がいくらでも湧いてくる」に繋がっていくのでした
2024/07/15 22:17
私の心にも差別の気持ちが全くないとは言い切れないと思います。
だからこそ、演劇という手段で、このような思いを繰り返し体験する必要があるのではないか、と思います。
この舞台が終わった後の世界で、ドーラとペルセポネーの人生が穏やかであることを、私も心から願いたいです。
これからも精進してまいりますので、どうぞ宜しくお願いいたします!