【延期公演開催】エアスイミング 公演情報 演劇企画イロトリドリノハナ「【延期公演開催】エアスイミング」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     演出をも担当の森下さん、共演の室田さんお二人が一所懸命に作品と格闘して練り上げた秀作、ベシミル! (追記7.7 17時11分)

    ネタバレBOX

     舞台美術は極めて洗練されたお洒落なもの。板が客席に”」“状に囲まれていることは周知の通りだが‟」”の対面の出捌けのある辺をAとし時計回りにB,C,DとするとA辺の手前に流し、流しの下にバケツ、その手前に塵箱、壁に沿って右側にはタオル、バスタオル、場面によって毛布等布製品が置かれた三段の棚、更に右側の壁手前には、デッキブラシ、箒、はたき、モップ等の清掃道具がキチンと収納され立て掛けてある。B辺の手前、C辺寄りの壁には茶系の色をしたベンチ(上蓋が開閉式になっており、場面によって小道具を出し入れできるようになっている)。板中央には船型の浴槽、当然その脇には蛇口が設けられており、湯水ケアの為のマットが敷かれている。また。C/D辺のコーナー。D/A辺のコーナーには丸い天板の木製椅子が一脚ずつ置かれている他、D辺の端客席の段には手摺の付いた階段があり、二人の収容者が一日のうち最も自由に行動できる掃除時間に掃除をする対象になっているエリアがある。因みに壁面の模様は下部に蒼穹を思わせるブルー、上部はタイル張りを模し空に浮かぶ自由自在に姿を変える雲を想起させる白。而も各升目は小道具の出し入れができるように開閉式になっており、出し入れの際には暖色系の色が付く。ここから取り出される小道具にはウィッグ、水泳に用いるゴーグルや帽子、シャボン玉を作る為の液体の入ったコップにストロー、ペルセポネーがドーラに贈ったプレゼントの撹拌機等の小道具が取り出され収納される。因みに下段の壁からも泳ぎの補助浮き輪に見立てたフラフープが出し入れできる細工が施されている念の入れようで、極めてセンスの良い、而も繊細で1924年当時の英国で実際にあった触法的精神病患者として収容された良家の子女であった被収容者の、現在の常識では考えられない半世紀に跨る理不尽極まる拘束という有様を可視化した。{実際の収容所は昏く陰湿であったであろうと想像される現実とは裏腹に異常とされた収容原因ペルセポネー(ポルフ)及びドーラ(ドルフ)のケースが描かれる。}ペルセポネーは妻帯者と恋に落ちて子を産み社会的不適合者としてこの収容施設に送り込まれた。ドーラは葉巻を嗜み、過度に男性的態度を取ったことが触法とされ今作の物語が始まる2年前の1922年から収容されている。因みにペルセポネーはドリス・デイの大ファン、ドーラは読書好きであり軍隊についても詳しい為、ペルセポネーの入所以来、先に入隊し階級も上の古参兵が後身に指導するという形で人間関係を形成してゆくが、触法精神病患者として収容される人々には女性が多かった。理由の一つに女性でありながら賢明であることなどが理由になった。このような歴史的背景を鑑み白いタイルの一部に触法的精神異常とされた人々の守護聖女・ディエンプナの肖像が飾られている。(今作で物語られた内容では、彼女は父にレイプされた結果子を孕み而も出産した子を実父に殺され自殺した女性であるとのこと。自分の記憶に間違いが無ければ10世紀頃に実在した人物であるという)
     ところで、自分はあらゆる芸術作品は解釈によってしか延命し得ないと考えている。今作の舞台美術も演出をも担当した森下 知香さんと共演の室田 百恵さんお二人の作品に係る長く真摯な討論を踏まえて“実際に精神を病んでいた訳でも無い二人の女性が上流社会で社会的恥と見做されていた価値観に抵触したというだけの理由で体面を守るという利害関係のみから娘を精神異常者と見做し収容施設に強制的に送り込んだ親や親族たちの「狂気」をこそ断罪した作品である”と人間として考え、作品の深い社会的闇(ジェンダー、宗教、習慣、世間体、常識及び精神異常というレッテル貼りによる強制排除の実態と被収容者達の拘禁故の様々な症状発生等々の被害者独自の精神的変異や、その時々での彼女らの内面を表象する重要アイテムの一つとして、このように実にキチンと整理整頓され、而も子供たちがウキウキして外で遊びだしたくなるような晴天と紺碧の海そこに浮かぶ白い雲をベースにしたような壁面の色彩。水辺に出、それこそ宇宙遊泳にも似た水泳感覚を、より宇宙遊泳に近いであろうエアスイミングで実現させていた、ペルセポネー、ドーラ二人に代表させた触法的精神異常者とされた多くの人々を文化的にもサポートする為に敢えてこのように明るく繊細で気持ちの晴れる美術にしたと解釈できるとする次第だ。
    脚本と一所懸命に格闘したればこその、この爽やかさが選ばれていようが、この爽やかさを壊さぬように而も社会そのものの異常性即ち「狂気」を炙り出すことに成功した二人の女優(演出も担当した森下 知香さんと室田 百恵さんお二人の演技も称えたい)も今作の魅力である。

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    2024/07/05 11:38

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  • みかんさんへ
    ハンダラです、お役に立てたなら大変嬉しく
    光栄に存じます。お互い精進して参りましょう。
                        机下

    2024/07/16 02:39

    ハンダラ様、いつもながら丁寧なコメント、誠にありがとうございます!
    非常に客観的な分析で、自分が演出していた作品なのに冷静に見ることができ、とても勉強になりました。
    どうもありがとうございました。
    これからも精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

    2024/07/15 21:37

    知香さんへ
    お疲れさまでした。大変お待たせしましてすみません。追記7.717時11分にしておきました。
                                      ハンダラ 拝

    2024/07/07 17:17

    みかんさんへ
    ハンダラです、追記はもう暫く時間を下さい。今週は芝居だけで5本観ているので、研究会・勉強会のあること、あったことも含めて時間に追われっぱなしです。悪しからず。共演の室田さん、制作さん、照明や音響など関係者の皆さまともども、楽迄駆け抜けて下さい。

    2024/07/06 12:50

    ハンダラさん、どうもありがとうございます!
    追記、楽しみにしております!

    2024/07/06 07:53

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