更地 公演情報 ルサンチカ「更地」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    『更地』は太田省吾作品の中でも人気が高く、これまでも複数の演出家が取り上げている。元々太田自身による上演が話題となった作品に挑戦する精神はそれだけで評価に値するが、ルサンチカの本公演はテキストへの誠実さが窺え、名作の新演出という点について考えさせられる作品となっていた。

    ネタバレBOX

    まず、本作品が上演されたロケーションが優れていた。『更地』の内容と一致するかのように、歴史(舞台は陸軍学校があった場所の跡地である)と日常(周囲を歩く近隣住民が常に目に入る)が入り混じっていたため、本作の舞台背景として優れていた。加えて二人の俳優の演技は、このようなロケーションと同じように、過去と現在を行き来するような、すなわち過去への郷愁と未来への希望を感じさせるようなものだった。自分たちのかつての住居と生活を見ているのか、それともこれから住む場所の未来の像を描いているのか、いずれとも窺える二人の関係性は、太田省吾のテクストの普遍性をも観客に感じさせる、極めて優れたものだったと評価できる。
    他方で、その普遍性ばかりが感じられたために、本作の固有性は今ひとつ感じられなかった。ルサンチカのウェブサイトにも書いてあるように、現代において『更地』は、戦争や巨大地震の跡地を連想させる。それはある特定の戦争や地震ではないが、今あるいはより身近な過去のカタストロフも連想させるものであろう。しかし、本作は非常に普遍的、匿名的であったために、「いつか・どこか」のものとして捉えることはできても「今・ここの」ものとして捉えるには、周りの風景にしか頼れなかったと言える。
    制作面については、CoRich舞台芸術まつり!2024春の最終選考に選ばれた際の賞金を観客に直接的な形でバックする(しかも「これまでにチケット代を理由に観劇を諦めてしまった方」を対象とする)というアイデアは画期的だったと言える。他方で、戸山公園に入ってからの案内などがほとんどなかったためにかなり迷ってしまったのと、(私が見た時は晴れていたので不自由なかったが)雨天や風の強い日の観劇環境はさぞや厳しいものだっただろうと思われたし、バリアフリーとはおよそ程遠い客席だったことは気になった。

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    2024/06/29 02:28

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