地の面 公演情報 JACROW「地の面」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    大企業が地面師グループに50億強騙し取られた実際の事件に着想を得た演劇。

    こういう派手な事件を題材にする時は犯人、つまり詐欺師を主人公にそのトリックを持て囃しがちなのだけど、そうはせず被害を受けた会社に焦点を当て、さらにその被害の裏に存在し得る組織の権力構造や内部抗争を物語の核心に据えている点が興味深かった。
    もうね、サラリーマン版アウトレイジじゃないですけど、私に言わせりゃ全員悪人ですよ。俳優さんらが達者だからいっそうにアウトレイジ(笑)。戦いはいつも男が始める、なんてよく言うけど、その始まりの始まりは椅子取りゲームなのだと思ったり。誰かよりも少しでもいい椅子に座りたい人々が権力勾配を狡猾に利用し、騙したり騙されたりして、つまり詐欺の裏にいくつもの詐欺がある。

    登場人物は幹部クラスの男性のみでそこに女性がまるで出てこない、出てきても会話の「かみさんはさ〜」くらいなところがまためちゃくちゃ風刺がきいていて。
    きっと組織でたんまり溜め込んだストレスを家庭でぶちまけても、"男同士の秘密"は決して打ち明けず、女性の人生にも関わる大事なことは何も知らせることなく過ごしてんだなーという感触も含めて、悪しき男社会をリアルに描いていると感じました。土地のことを「女」とか言っちゃうし。
    でも、救いようのないところがよかった。
    「これが男の生き様だぜ⭐︎」みたいな美化や心酔は全くなくて、愚者として貫かれている。
    そこに作家のスタンスを見た気がしました。
    それでも、私はやっぱりこうも思わずにはいられない。

    あの中に一人でも女性がいたら、幹部の人選に女性が一人でも抜擢されていたら、あの詐欺はもしかしたら防げていたんじゃないか、と。

    流石の俳優陣かっこいいなあ〜と思って見つめてた冒頭のダンスシーン、観終わる頃にはすっかりと印象が変わっていた。地位や名声に踊らされている人たち、その滑稽さ。そして、俳優の力。最初と最後も同じシーンなのに景色が反転する。地の正体を巡り、14人の男の"地の面"が暴かれるまで。サスペンフルな作劇の魅力もありました。
    映画『走れない人の走り方』ではあんなに柔和な父だった谷仲恵輔さん、見る影なかった...(賞賛の意です!)

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    2024/06/22 04:38

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