キネカメモリア 公演情報 SPIRAL MOON「キネカメモリア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    ベシミル! 演劇と映画の方法上の差異を見事にクリアしている! (追記20:59アップ)
     いつも通りきめ細かな創りだが、モギリを終えて劇場入口へ至る階段脇の壁にも映画のポスター等が貼られ映画館の雰囲気を醸し出している。劇場へ入ると映画に纏わる様々な音響が英語で流れている。今回の舞台美術で最も驚かされたのが下手に奈落から上がってくる階段が設えられていたことだ。この劇小劇場にも数十回以上通っているがこのような使い方は初めて見た! 因みに奈落からの階段を上がるとホリゾントの手前に映画館モギリの机と椅子。ホリゾントには往年の話題作のポスターが貼られ上手ホリゾント前では売店の女子販売員が、何やらもぐもぐ食べている。この売店正面にもサイズの小さなポスターが貼られる念の入りようだ。上手側壁に緋のクロスが床まで垂れているが、これが映画観賞室への入り口、その観客席側に階段が設けられているが壁にstaff onlyの張り紙。映写室への通路である。奈落から映画館へ入る入口の階段脇には手摺が設けられその前に椅子が二脚並んでいる。尺は約80分。濃密に時間を過ごせる。

    ネタバレBOX

     さて今作、芝居で映画に魅入られ映画を友として生きる人々個々の拘りや各々の人生経験を背景にした世界との向き合い方、近くに高速道路が通ることでショッピングモール計画が持ち上がりディヴェロッパーと称する地上げ屋が、ショッピングモール計画の臍とも言える一等地に在るこの映画館の土地所有権を巡って暗躍する物語でもあり提起されるオイシイそうな話にどう対応するか? との緊張感を交えつつ仏ヌーベルバーグの影響を受けアメリカで始まったニューシネマ運動、その1960年代世界中で巻き起こっていた造反有理に集約される若者反乱等を経験してきた常連客、その後継者と見込まれた女子高生、映画館に隣接するストリップ小屋の踊り子等々と登場する男性陣との恋や思い掛けない社会的関係を巧みに織り込みつつ、演劇という表現方法で映画という表現の持つ魅力を描いた作品と言える。非常に上手いと思うのは、映画のシーンは一切用いられていないことだ。これには訳があろう。演劇の特性は観客の目の前で役者が生身でそのパッション、主張、高揚・哀感から絶望迄人生に起こる総てを直に観客に伝えることが基本だ。それに対して映画は俳優たちの演技をカメラアイを通じて観つつ撮影し出来上がったフィルムを編集して、今度は映写機に掛けてスクリーンに映し出すという幾重もの工程を経て漸く観客に届くから各工程に於いて失われるものが在る。これが生の役者の持っていた演劇表現の迫力、インパクトの多くである。演劇上演の央に、各工程を経る毎に生の迫力を失ってしまう実際の映画のワンシーンでも用いられていたら、演劇で映画の持つ魅力やそれに魅入られた観客を描き関係者の意気地の意味する処迄を描くことで映画独自の魅了をそこはかとなく描こうとする今作の魅力を喪ってしまう。今作はワヤになってしまっていただろう。それを避ける恐らく唯一効果的な方法、それが観客の想像力に訴えることだとしたら・・・。筆者の謂いたいことは自ずと読者にも伝わるであろう。ラストシーンがじ~んと来るのは売店の女子従業員が相変わらずもぐもぐ食べ続け、館長は今迄同様何の変哲もないかの如く余りにも普通にしている。当にこれらのことが、チェーホフがその傑作群で拘ってみせたテーマの一つである、生きること、生き続けることのリアルだ。そしてこの拘りへの結果が、チェーホフ作品群の残照の如く、映画に魅入られ映画を友とする総ての人々、そして同じく役者の演技で成り立っている演劇の魅力に魅入られ、演劇を友とする人々総てに対するオマージュをも示唆しているということが言えよう。

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    2024/06/21 05:20

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  • 皆々さま
    ハンダラです、遅くなりましたが追記アップしました。
    ご笑覧下さい。

    2024/06/21 21:01

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