実演鑑賞
満足度★★★★
コロナの間この劇団を見る機会がなかったが、その間に作者は随分上手くなった。
経済社会や政治社会を直接舞台にとってそこでドラマを作るのは、現代人を描くには良い着想だと思っていたが、経済構造や政治構造がドラマとしてリアルに描区のは難しい。つい、なじみのある人情話に落としてしまいがちだった。
今回は、不動産業界を舞台にした土地売買詐欺事件を素材に、不動産会社の人間模様である。
そういえば、アメリカの芝居で「グレン・ガレイ・グレン・ロス」という不動産業界舞台の犯罪がらみの芝居があった、と思いだした。舞台の米日の国情の差も面白い。あちらはセールスマン同士の個人の業績競争、こちらは不動産会社の中の出世競争のグループの話になっている。「グレン・ガレイ」はリアルな舞台展開だが、「地の面」は、かなり様式的で、ダンスも取り入れ、ステージングも抽象的で、詐欺事件の話をテンポよく織り込んでいる。会長社長以下の会社組織は従業員何千人という会社としては戯画的になっているし、詐欺師たちを、その場にいながら姿を見せない存在としているのも、事件の子供だましみたいなところと似合って成功している。荒技のところもあるが、面白く展開できたのは、作者が腕を上げたから、である。
出演者は中年の男ばかり9人。小劇場で知られた顔が多いが、今回は名古屋小劇場の重鎮が二人参加している。休憩なしの二時間。ほぼ満席、珍しく若い三十代以下の男性客が多く
こういう実社会エンタメの作品の路線はこの小屋の売り物になるかも知れない。男性客が多いと言うことをまず、買わなくては。