百年への贈り物 公演情報 川崎郷土市民劇上演実行委員会「百年への贈り物」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    97歳の現役劇作家、小川信夫が主に脚本を手がける「川崎郷土・市民劇」の特色は、ただ単に歴史や偉人を描こうというのではなく、劇を通じて、地理や風土、文化も含めたその土地の姿そのものを立ち上げようとするところにある。

    浄水場をつくり、工場を誘致するなど、現在の「川崎市」の原型をつくりあげた石井泰助を主人公とする本作もまた、石井を中心に置きつつも、彼の心情やその功績を讃えるというよりは、そうした物語を生み出した環境、事情、そこに生きる人々の姿を丁寧に描き出していく。特に今回は2019年の台風19号による多摩川の水害の様子を冒頭に紹介することで、歴史と現在を巧みに結び合わせてもいた。

    巧拙はもちろんあるものの、公募で決まったキャストの演技も、ずいぶんと落ち着いているのが印象的。地域の物語を、地域の人々が演じ、その歴史や文化を内面化していくというのは、市民劇の定番のあり方だが、流行のミュージカル(音楽劇)スタイルでもなく、あくまでリアリズム演劇に足場をおいた「演劇」を実践しているという意味でも、この企画は稀有なのではないか。

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    2024/06/15 12:46

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